「ちょっと青峰!授業出なよ!」

昼休み、午前中の授業を全てサボった青峰を探しに屋上まで来ると、案の定グラビアを見ながら寝そべる彼の姿があった。冬に大会で初めて負けてから、青峰は部活に出るようになった。けれど、朝練に出てそのあとはたいていサボるか寝るかで、放課後はまた部活をするような生活の青峰の素行は、決していいと言えたものではない。

「うっせーな、いいから寝かせろブス」
「彼女に向かってブスってなに!」
「彼女だろーがブスはブスだろ」
「うっさいガングロ!」

バスケと向き合うようになっても、やっぱり青峰は口が悪い。いっつもブスとか言ってくるし、平気でおまえ太った?とか聞いてくるし。女の子の幼なじみがいるくせに、こいつは女心がわかってなさすぎる!

「だから怖がられるんだよ青峰のばーか」
「あ?知るかよ」
「無愛想だし無気力だし無神経だし無神経だし無神経だし!平気で人にブスブス言うのやめてよね!」
「ブスにブスっつって何が悪ぃんだっつーの」
「…もう浮気する!」

私がそう言うと、青峰の眉がぴくりと動いた。寝そべっていた大きな身体をむくりと起こし、しゃがみ込む私に正面から向き合う。ふ、やっぱり食い付いてきた!威圧感尋常じゃないけど!怖いけど!

「浮気だあ?誰とすんだよ、言ってみろ」
「………い、今吉先輩」
「あァ?あの腹黒眼鏡だけは絶対やめとけ」
「青峰より優しいもん!」
「んなモン演技に決まってんだろが。あいつの性格の悪さは筋金入りだぜ」
「でも今吉先輩はブスとか言わないし」

青峰の眉間にどんどん皺が寄る。こ、こわいけど、負けてたまるか!青峰が私のこと大好きで仕方ないってこと、私知ってるんだからね。

「…オメーな、いい加減にしろよ」
「彼女にひどいことばっか言うから悪いんでしょ!」
「浮気するとか言い出すオメーも悪いだろ!」
「じゃあ私のこと好き?」
「なっ…!」

青峰の目を覗き込んでそう尋ねれば、彼は明らかに動揺して視線を泳がせ始めた。その様子は明らかに照れていて、私は自分の口角が上がってゆくのを感じる。青峰は直接的な責めに弱いってことも、ちゃーんと知ってるんだから。

「ほら、どうなの」
「…オメーも大概性格悪ぃな」
「青峰が素直じゃないのが悪いんでしょー」
「オメーこそどうなんだよ、あ?」
「私は青峰のこと好きだよ」
「っ!」

へへ、墓穴掘ってやんの!私の言葉でさらに追い詰められた青峰は、さっきにも増して視線が泳いでいる。浅黒いその頬もほんのり朱が差してきて、そんな彼を見てれば私のことどう思ってるのかなんて一目瞭然なんだけど、でもやっぱり言わせたい。さっきよりも距離を詰めてどうなの、と尋ねると、青峰は覚悟を決めたように私に視線を合わせた。真っ赤な顔が、彼らしくなくて可愛らしい。

「好きに決まってんだろ、ブス」
「あ、またブスって言った!」
「うるせえ」

青峰は私の後頭部に手を廻して、そのまま自らの胸板に私を押し付けた。この行為から素直じゃない彼の愛情が感じられて、ふふ、と頬が綻ぶ。笑ってんじゃねーよ、と上から声が降ってきたけれど、でもそんなの気にならなかった。私のこと好きで好きで仕方ない青峰を、私も好きで好きで仕方ないのだ。

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