「黄瀬くんと付き合いだしたってマジ?」

昼休み、突如なまえから先お昼食べといてとメールが入った。なんでと送っても返信が来ることはなく、嫌な予感がして校舎を探し回っていたら案の定。校舎裏なんてベタなところに彼女を呼び出したらしいこの女たちは、以前にも見たことがある。数ヵ月前にもなまえのことをここに呼び出して、俺とのことを問い詰めていた集団だった。

「…まあ、うん」
「好きじゃないって言ってたよね」
「あの時は好きじゃなかったから」
「私たちみょうじさんよりずっと前から好きだったんだよね」

俺たちのことを応援する派閥が出来たとはいうが、やはり良く思っていない派閥も根強く存在するようで。女たちのなまえへの目は敵意剥き出しで、割と肝の据わった奴とはいえ心配になる。多対一だし。ここからでは彼女の表情は窺えないが。ちょっとこれは、助けに行った方がいーかな。校舎の影から一歩踏み出して、なまえたちの元へ行こうとした瞬間。

「…けど今は私もあいつのこと好きなの」

彼女は毅然とした態度で、とんでもない爆弾を投下した。予想外のタイミングで予想外の発言をする彼女に驚いて足が止まる。なに、なんで俺がこんな照れる羽目になってんの。顔めっちゃ熱いんだけど。普段俺にデレてくんないくせに、なんで俺以外の奴には好きとか言うんだよ。心臓いくつあっても足んねー、なんて思いつつ、彼女たちの元へ再び足を向けた。

「私たちはみょうじさんよりずっと前から黄瀬くんのこと見てるの!今さら出てきて好きとか言われてもはっきり言ってムカつく!」
「ちょっと、なにしてんスかあんたら」
「え」

背後から登場しなまえの肩を抱いてそう言えば、女たちもなまえも揃って俺を見上げてきた。まさか争いの原因である張本人が現れるなんて思いもしなかったのだろう。女たちは驚いて俺を見つめたあと、お前が呼んだんだろ、と言わんばかりになまえを睨んだ。

「もー、なまえとお昼食べるの楽しみにしてたんスけど」
「…なんでいんのあんた」
「や、愛するなまえのピンチかと」

にこりと笑ってそう言えば、彼女は呆れたように溜め息をつき俺の手をはたいた。ま、軽口叩くのはこれくらいにしておいて。女たちの方を向けば罰が悪そうな表情で目を背けていて、んな顔すんなら最初からすんなよと言いたくなった。なまえ敵に回した時点で、俺も敵なんだっつーの。

「見ての通りだけど、俺この子のこと好きなんスよ。わかってほしいっス」

女たちに真面目な顔でそう告げれば、言い返せなくなったようで黙って逃げて行ってしまった。下手に威圧するより、こう言った方が効果あるんスよね。真正面から言われたらさすがに受け入れるしかねーし。ま、下手に泣いたり逆ギレしたりしないあたり、あの女たちはまだ良心的な方なのだろう。過激派とかいたらこえーな、なまえのことちゃんと見とかねーと。

「…あんた、まじでなんで来たの」
「なまえが何かされたらやじゃん」
「別に平気だっつの」
「まあまあ、そんな俺のこと好きなんでしょ?」
「は、自惚れんなバカ」
「今は私も好きっつってたのは誰っスかねえ」
「!」

さっきのセリフを言ってやれば、なまえは目を見開いて、そして徐々に顔を赤らめて。照れた顔で俯いてパンチなんてしてきて、正直可愛すぎてやべえ。

「いつもあれくらいデレてくれたら嬉しいんスけど」
「調子のんな!」
「はいはい」

真っ赤な顔で睨まれてもそそるだけです。照れ隠しのつもりなのか悪態をつくなまえに隙を見てキスをしてやれば、さっきよりも更に赤くなって蹴りを入れてきた。あーもう、ほんと可愛い。なまえの手をとって歩き出すと、ぶつぶつ文句を言いながらもその手を拒むことはなく、むしろしっかり握って後ろをついてきて。そんな可愛い彼女のことを、俺はしっかり守ってやらなければと改めて思った。

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