発案者は誠凛さん。みんなでストバスをやろうって声をかけてきてくれて、誠凛、桐皇、秀徳、そして海常で集まることになった。結局来れるのは笠松先輩と黄瀬くんとマネの私だけなんだけど。誠凛の木吉さんと桐皇の青峰くんが遅刻して少し開始が遅れたけれど、無事始まったストバス大会。黄瀬くんは緑間くんに頼んで籤を換えてもらって、黒子くんと同じチームになっていた。

「黄瀬くん、頑張ってね」
「ん、絶対勝つから見ててよ」

黒子くん伊月さんと同じチームの黄瀬くんを応援すれば、得意気に笑って頭をくしゃっと撫でられた。私たちの関係は何故かみんなに知れているようで冷やかされつつ、コートに入る黄瀬くんの背中を見守る。真夏の太陽にシルバーのピアスがきらきらと反射していて、まるで彼の笑顔みたいだと思った。

「きーちゃんとはいつから付き合ってるの?」
「えっと、春の終わりくらいかな?」
「そうなんだ!なんかきーちゃんすごい自然体だからビックリしちゃった」

桐皇の桃井さんに声をかけられちょっとドキドキしつつ答えると、黄瀬くんにも負けないくらいの眩しい笑顔で返された。インターハイの時からずっと思ってたけど、この子ほんとに美人だなあ。中学の時からマネだったらしいけど、こんな子が近くにいて好きにならなかったなんて黄瀬くんは目が肥えすぎである。

「きーちゃん周りにやたら明るく振る舞ったりするとこあるじゃない?疲れないのかなってずっと思ってて」
「あー…そういうとこあるね」
「だからなまえちゃんへの態度見てたらなんかちょっと安心しちゃった。きーちゃんのことよろしくね!」

よ、よろしくされてしまった…!うん、と笑って返事をしつつ、試合中のコートへ視線を向ける。あ、またダンク決めてる。きらきら輝く笑顔で楽しそうにバスケをする黄瀬くんに、私までつられて笑顔になる。ああ、本当にかっこいいなあ。


試合を何度か繰り返していると、真夏の陽射しに参ったのか立っていただけの私が少し不調になってしまった。情けないなあ、なんて思いつつ、悪化して迷惑をかけるわけにもいかないのでこっそり移動して後方のベンチに腰掛けた。みんなすっかりバスケに夢中で誰も気付いてなくて、ほっとしながらみんなの姿を眺める。あ、笠松先輩スリー決めてる。

「なまえ、調子悪い?」

試合に見入っていると頭上から声がして、見上げればペットボトルに口をつけた黄瀬くんが心配そうに私を見下ろしていた。

「ちょっと陽射しにやられちゃっただけ。けど平気だよ」

にこ、と笑ってそう返すと、黄瀬くんは心配そうなその表情を変えることなく、私の隣に腰掛けた。かと思えば、首にかけていたタオルをするりと抜き取って、私の頭にそっと被せる。ふわ、と黄瀬くんの香りが鼻を掠めて、どきりと心臓が高鳴った。

「はい。汗臭いけど、我慢して」
「ぜ、全然臭くないよ!」
「ん、これも飲んで」
「あ、ありがとう」

黄瀬くんがついさっきまで飲んでいたスポーツドリンクを渡される。ちょっと戸惑ったけど、黄瀬くんの真剣な表情を見れば飲まないわけにはいかなかった。間接キス、というワードが頭をぐるぐる回る中、少し甘いそれで喉を潤す。

「無理しないの。帰る?」
「だ、大丈夫!そんな大事じゃないよ、座ったらだいぶ楽になったし」
「…キツくなったら言うんスよ」
「うん、でもほんとに平気だから」

先程と同じようににこりと笑うと、黄瀬くんはふう、と溜め息をついて、両手でタオルの裾を掴んだ。ぐい、と力を入れられ強制的に黄瀬くんの方を向かされる。

「き、黄瀬く、!」

そのまま顔を近づけられ、そっと黄瀬くんの唇が私のそれに触れた。タオルで私の顔は隠れてるけど、でもすぐそこにみんないるのに…!慌てて目も閉じることが出来ずにいると、黄瀬くんの唇はゆっくり離れていった。目と鼻の先で黄瀬くんが妖しく笑う。さっきよりも、ずっとずっと熱い。みんなの声やボールの音が、やけに遠くに聞こえた。

結局黄瀬くんチームは負けてしまって、私たちの行為を見ていたらしい桃井さんに「きーちゃんイチャイチャ禁止!」と怒られていた。

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