「みょうじ、誕生日おめでとう」

赤司くんがにこりと微笑んでそう言うと、みんなも続いてお祝いの言葉を掛けてくれる。そう、今日は私の誕生日なのだ。帝光バスケ部の面々が、私のためにわざわざ誕生日パーティーを開いてくれて。さつきちゃんに連れられ部室に入ると、その瞬間みんながクラッカーを鳴らしてくれた。状況が飲み込めず狼狽える私の目に入ったのは、なまえ誕生日おめでとうと大きく書かれた横断幕。部室も華やかに飾りつけられていて、嬉しすぎて涙が浮かんだ。

「えっ、なまえちゃん!?」
「なまえちんなんで泣いてんだしー」
「ご、ごめ、嬉しくて…!」

みんな部活で忙しいはずなのに、こんなことしてくれるなんて。じわじわと込み上げてくる涙を拭っていると、黄瀬くんの隣の席に通された。黄瀬くんが優しく頭をポンポンして、泣かないの、なんて言ってくるから頑張って涙を止める。そうだ、早く泣き止まなくちゃ。

「あー!ちょっときーちゃん!なまえちゃんのこと独り占めしないでよね!」
「そうですよ、今はみんなで祝ってるんですからね」
「わかってるっスよー」

顔がボッと熱くなる。そ、そんな、独り占めとか…!恥ずかしくて涙も引っ込んでしまった。そんな私の反応はさぞからかい甲斐があったらしく、顔真っ赤、とみんなに冷やかされた。

みんなが手作りケーキを出してくれたり(さつきちゃんにだけは絶対触らせなかったらしい。正直助かった)、誕生日プレゼントをくれたり、私を喜ばせようといろんなことをしてくれた。みんなもだんだん楽しくなってしまったようで今では私抜きでもかなり盛り上がっていて、そんな光景を見るのが幸せすぎて一歩退いたところでそれを眺めていた。

「主役がなんで後ろにいるんスか」
「黄瀬くん」

そんな私に気付いた黄瀬くんが、みんなの輪を抜け私のところにくる。壁に寄りかかってしゃがむ私の隣にしゃがみ込み、顔を覗き込んでくる。黄瀬くんの整った顔がこうも近づくと、付き合っているとはいえ正直恥ずかしい。

「や、なんか、幸せだなって」
「なんスかそれ」

にこりと微笑んでそう言うと、黄瀬くんはくす、と小さく笑った。また大きな手で私の頭を撫でてくれて、その心地好さに目を細める。みんなのことも黄瀬くんのことも、ほんとに大好きだなあ。

「なまえ、誕生日おめでと」
「…うん、ありがとう」

再び祝われたかと思うと、私の顔を覗き込むように黄瀬くんの顔が近づく。あ、これは、キスされる。反射的に目を閉じると、予想通り黄瀬くんの薄い唇が私のそれに重なった。かと思えばすぐに離れて、にっと黄瀬くんが微笑む。ぶわっと顔が熱くなって、きっと今真っ赤になってるんだろうな、なんてどこか他人事のように考えた。

「このあとどっか行こ、二人でもちゃんと祝いたいから」
「…ありがとう」

黄瀬くんの優しい笑顔に、ああ私愛されてるんだなって実感して。そう思ったら好きな気持ちがどんどん溢れてきて、それを抑えることなく大好きだよと呟けば、予想外だったのか黄瀬くんは珍しく目を見開いた。いつも余裕そうな彼のこんな表情、滅多に見れない。なんだか嬉しくて笑えば、あー、と唸りながら黄瀬くんは頭を掻いた。

「あんま可愛いこと言わないで。みんないるのに我慢できなくなるっしょ」
「え、そ、そんなつもりじゃ」
「俺も大好き。あとで覚えてろよばかなまえ」

ちょっと物騒な言い方だけど、黄瀬くんはふにゃんと頬を緩めていて。そんな表情に再度頬を染めていると、黄瀬くんは立ち上がって私に手を差し出した。みんなの輪に戻ろ、ということらしい。その手を掴み引かれるままにみんなの元へ戻ると、なんだかんだで私たちのやり取りを見ていたらしいみんなに散々冷やかされた。こんな幸せな日がずっと続くといいと、みんなと笑いながら密かに願った。

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