なまえはモテなくはない。そんなことは好きになる前から知っていた。知ってはいたが、実際それを目の当たりにするとなると、やはりいろいろと違ってくるわけで。

「みょうじこの映画観たいって言ってたよな?」
「え、うん」
「こないだテレビで特集されてんの見たら俺も観たくなってさ、一緒に行かね?」

なまえのクラスに足を運べばちょうど彼女がデートに誘われてる場面に遭遇してしまい、あからさまに顔が引きつったのがわかった。なーにが映画だっつの、映画なんかどうでもいいんだろなまえとデートしたいだけだろ。イライラしながら教室内に入りなまえと男の元へと一直線に向かう。さすがに気付いたらしい二人は揃って俺を見上げ、男は焦ったように目を逸らした。俺がいない隙にとでも思ったんだろうけど、残念でした。

「ちょっとなまえ借りてくっスね」
「え、ちょ、何!」

男に笑顔でそう告げると、なまえの返答も聞かず腕を掴んで連れ出した。向かう先はもちろん、踊り場だ。
俺となまえは確かにまだ付き合ってない。けれど、確実に彼女の中で俺の存在はでかくなってる。このまま攻めていけば、きっといずれは。あんな男が入り込む隙なんて、ない。

「ちょっと黄瀬!何!」
「…なーにデートなんか誘われちゃってんスか」
「…見てたの」
「モチロン」

ばつが悪そうな顔をして、俺から視線を逸らすなまえ。ま、実際なまえが悪いんじゃねえし、そんな顔する必要ないんスけど。

「どうするつもりだったんスか」
「…友達と行く約束してたから、断ろうと思ってた」
「約束してなかったら?」
「…なんであんたにそんなこと言わなくちゃいけないわけ」

不快そうに俺を睨むなまえ。全然怖くねーけど。つーか、俺も何やってんだか。こんなになまえのこと責め立てたって、どうしようもないのに。逸る気持ちを抑えるようになまえを抱き締め、小さな耳に唇を寄せた。

「あんたが好きだからに決まってんだろ」

吐息がちにそう呟けば、肩をビクつかせ面白いほどに反応を見せるなまえ。あー、かわい。そのまま耳に唇を落とし、穴を舌で攻め込む。俺の肩に手をついてぎゅっとワイシャツを握り締める姿に加虐心を煽られてしょうがない。それ抵抗のつもりなんスかね?

「で?どうなんスか」
「っ、断っ、てたよ…っ」
「なんで?」
「…っ、黄瀬が、頭に浮かんで、友達と行くからとか以前に、断んなきゃ、って…」

あーあ、ほんと可愛いよどうしよ。耳まで真っ赤にして途切れ途切れに呟く彼女にどんどん愛しさが込み上げてくる。耳から顔を離し、額にそっと唇を落としてぎゅっと抱き締めた。

「…ごめん、嫉妬しただけっス」
「は」

彼女と同じクラスであることに、彼女を誘っていることに、嫉妬しただけ。ガキくせえことしちゃったな、なんて柄にもなく反省していると、なまえが俺のワイシャツの裾をきゅっと掴んだ。これは、許してくれるということだろう。彼女の行動が可愛らしくて、俺は自らの腕に力を込めた。

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