中学時代、友達の付き添いで見に行ったバスケの大会。それまでバスケに全く関わったことのない私だったけど、気付けば完全に魅了されていた。何故なら、とある男の子のプレーに、心を奪われたからだ。

「あの、マネージャーって募集してますか?」

バスケが好きになってから1年。残念ながら私にはバスケをする体力も運動神経もなかったため、高校でマネージャーをやろうと決めルールを学んでおいた。高校の入学式である今日、勧誘の嵐を抜けバスケ部のブースまでやって来た。女の先輩と男の先輩が揃って私を見上げる。

「大歓迎よ!ウチマネージャーいないから助かるわ!」
「よっしゃ!ついに女子キタァ!!」
「日向君?私も女子なんだけど?」
「あ、いや……とにかく!マネージャーも募集中だ。是非入ってくれ!」
「ありがとうございます!」

入部届けに名前を書いて、先輩二人に提出する。放課後体育館に来るようにとだけ言われ、了解してバスケ部のブースを離れる。校舎に向かって歩いていると、爽やかな春の風と共に、私の隣を何かがすり抜けた。見覚えのある水色に、すぐさま振り返る。

「あれ…?」

が、そこには先程までと同じ光景が広がっているだけで。

「…いるわけないよね」

誰に言うでもなくそう呟いて、再び校舎に足を向ける。そうだよね、あの人がこんなところにいるわけない。少し期待した自分に溜め息を吐きつつ、自分のクラスへ向かった。


放課後になり体育館へ向かうと、既に入部希望者がちらほら揃い始めていた。中でも一際目立つガタイのいい男の子は目つきも鋭くて、この人と仲良くなれるのかな、と少し不安になったり。もうちょっと仲良くなれそうな、優しそうな人はいないだろうか。キョロキョロ辺りを見回していると、壁際に佇む、信じ難い男の子の姿を発見した。水色の髪、バスケ部にしては小柄な身体、凛としたその表情。間違いなく、あの時の彼だ。

「あ、あの!!」
「はい?」

考えるより先に、身体が動いてしまっていた。だって彼は、あの時コートを駆け回って、パスでチームを支えていたあの人。

「帝光中で試合出てた人ですよね?」
「?はい」

やっぱり、あの人だ。驚きと感動で言葉を失うも、困惑した表情で私を見つめる彼に慌てて次の言葉を述べる。

「あの!私、中学の時試合に出てるあなたのこと見て!それで、バスケに興味もって…」

そう、私は彼のプレーを見て、バスケに惹かれたのだ。点を取ることももちろん大事だけれど、周りの状況をしっかり見て、味方にパスを出すその姿に、私は心を奪われた。

「…そんなこと言われるのは初めてです。ありがとうございます」
「!」

にこ、と微笑む彼の表情があまりに優しくて、思わず目を奪われた。こんなふうに笑うんだ、この人。窓からふわりと入ってきた春の風に誘われて、どき、と胸が高鳴ったのを感じた。

「あ、の、みょうじなまえって、いいます」
「黒子テツヤです。よろしくお願いします」

ぽかぽか胸が温かくなる。黒子、テツヤくん。彼の優しい笑顔から、目が離せなかった。
そんな彼の隣を歩くことになるのは、もう少し先のお話。

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