「ちょっと総悟!仕事してよ!」
「うるせーや。俺ァ今から甘味屋の治安維持に務める」
「江戸の治安維持に務めろ!」

結婚騒動から1ヶ月。各方面に謝罪に廻って最近やっと落ち着いた真選組。張本人であるため当たり前に謝罪に出ずっぱりだった私はしばらく真選組の仕事からは離れていて、今日は久々に一隊士として、見廻りの仕事を任せられた。久しぶりだし、気合い入れて仕事するぞ!と意気込んでいたのに。

「なんで総悟となの…」
「あ?なんか言ったか?」
「なにも」

このサボり魔と見廻りなんて、むしろ町よりもこいつが暴れないよう見張ってた方が江戸は平和になれるのではないだろうか。以前にも土方さんが頭を悩ませていたが、こいつのバズーカによる被害総額は真選組の財政を大いに圧迫している。

「ばーさん、いつもの頼みまさァ」
「はいよ」

総悟はもはや常連のようで、甘味屋のおばあちゃんに慣れた様子で注文すると外に置いてある長椅子に腰掛けた。これで一番隊隊長なんて真選組ほんとに大丈夫なんだろうか。…こんな男に惚れてる私も、大丈夫なのか。

「お、沖田夫妻じゃねーか」
「あれ、こんにちはお二人とも」
「なまえ!!久しぶりアルな!!」

呆れ顔で総悟を見ていると後ろから声がかかり、振り向けばそこには見慣れた三人組の姿があった。結婚騒動の際、式場に押し掛け結婚式をめちゃくちゃにした、という汚名を被って私を守ってくれた三人。この人たちがいなかったら、今私はこうして溜め息をつきながら団子を貪る総悟を見下ろすことは出来なかった。

「こんにちは。久しぶり神楽ちゃん!」
「オイ、俺への挨拶は無しかクソチャイナ」
「あァ!?誰がオメーに挨拶するかってんだヨ!」
「ちょっと総悟!ごめんね神楽ちゃん、あとで叱っとくから」
「年上に対する礼儀がなってねぇなァ」
「年上自慢する奴ほど小物ネ。そんな小僧になまえ渡すのはやっぱり惜しいアル」
「渡すも何も最初から俺のでィ」
「え」

予想外の発言に固まっていると、総悟が食べ終わった団子の串を神楽ちゃんに投げつけ、それを皮切りに乱闘が勃発してしまった。二人の戦いはもはや超次元、あれを止めろと言う方が無理である。どうにか収めようとする新八くんになんとなくデジャブを感じながら、先程まで総悟が腰掛けていた長椅子に座った。

「なーに今更照れてんだよ。婚約してんだろ、おめーら」
「…それは、そうですけど」

でも、総悟がみんなの前であんなこと言うなんて。そんなキャラじゃないし、そういうことしたがらなそうなのに。何より私が照れ臭くて俯いていると、銀さんに最後の一串が乗ったお皿を差し出された。どうやらくれるということらしく、ありがたくそれを手に取り口に運ぶ。

「おめーが知ってるかは知らねーがな、アイツめちゃくちゃおめーのこと好きだぞ」
「!」
「いっつもおめーのこと見てるし、案外嫉妬深いしな」
「え」
「旦那ァ、いい年こいて10代の彼氏持ち小娘ナンパするたァ、なかなかいい根性してやすね」

銀さんの言葉が信じられなくて聞き返そうとすると、いつのまにやら戦いを終えた総悟が私たちの前に気だるそうに立っていた。ポケットに手をつっこみやる気のない表情を浮かべているけれど、その目はどことなく機嫌が悪そうで。

「お前こそ三十路手前のオッサンが口説いてる女横取りしようたァいい度胸じゃねーか」
「誰の許可得てそのブス口説いてやがんですかィ、そいつァ俺のでさァ」

表情を少しも変えることなくそう言うと、総悟は私の腕を掴んでスタスタと歩き出してしまった。ちょ、まだお団子食べ終わってないんですけど!銀さんの方を振り返ると、ほらな?とでも言いたげな表情で笑いながらひらひらと手を振っていた。

「…ったく、おめーは大人しく見廻りしてなせェ」
「総悟もね。…今日はもうサボらないの?」
「うるせェ」

不機嫌そうにそう溢して、総悟は私をパトカーの助手席に押し込んだ。

「…総悟、好きだよ」
「…知ってまさァ」

パトカーを発進させる総悟にそう呟くと、総悟は少しだけ、ほんの少しだけ笑った。そんな表情の変化が嬉しくて、私もつられて笑顔になる。
やっぱり、総悟と見廻りをするのもいいかな、なんて思った。

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