「黒子くんおはよう!!今日もカッコイイね!!」
「おはようございますみょうじさん」

朝教室に入ってまずすること。それは黒子くんへの朝のごあいさつ。涼しげな表情で本を読む黒子くんに今日も元気におはようと告げると、彼はその表情を崩すことなくさらりとあいさつを返してくれた。ああもう、今日もカッコイイ!

「火神くんもおはよ」
「おす。なんつーか…毎日懲りねーな、お前も」

呆れ顔で私を見つめる火神くんにえへへと笑えば、照れるとこじゃねーよとつっこみを食らった。黒子くんに毎日アプローチを重ねては見事にスルーされる私を最初こそ心配そうに見ていた火神くんだが、もはや日常となってしまったこの光景に彼は呆れしか感じなくなったようで。

「だって黒子くんがかっこいいんだもん」
「…お前ももっと相手してやれよ黒子」
「ありがとうございますみょうじさん」
「お前って何気にスルーすんのうめえよな」

火神くんの言う通り、黒子くんはスルースキルが高い。素なのかわざとなのかはわからないけど、必死のアピールは果たして届いているのだろうか。私は本気で黒子くんが好きなんだけど、ちゃんと伝わってるのかな?これだけ好き好きオーラ出してもだめってことは完全に脈なしなんじゃないか、というのは一先ずおいておこう。

「みょうじも変わってるっつーか…なんで黒子なんだよ?」
「え?だって優しいしかっこいいじゃん!」

最初は私も、黒子くんのことを影が薄い子だなあと思ってた。バスケ部らしいけどあまり運動が出来るイメージはないし、勉強だって可もなく不可もない。真面目なのかと思いきや案外授業中に寝てたりするし、本当にただ薄いだけの、普通の子なんだなって。けれど周りをよく見ていたり、さりげない気遣いをしてくれたり、そんな控えめで優しいところに次第に惹かれるようになって、今ではこんなに大好きになった。…それが伝わってるのかは別として。
黒子くんが人よりもずっと周りを見てるから、私はその分黒子くんを見てあげたいのだ。見失われがちな黒子くんを、しっかりと見つけてあげたい。そんな気持ちが全く通じていないんだと思うと、やっぱり少し寂しいけれど。

「…みょうじさん?」
「え?なに?」
「いや…なんだか、急に元気がなくなったように思ったので」

読んでいた本から視線を離し、私を覗き込んでくる黒子くん。ああ、そういう優しさが、私は大好きなんだ。切ないような温かいような不思議な気持ちになり、大丈夫だよと笑顔で言うと、黒子くんはふわりと柔らかい笑みを浮かべた。

「みょうじさんの元気がないと、ボクも寂しいですから」
「え?」
「いつもボクを見ていてくれてありがとうございます。ちゃんと、伝わってますよ」

黒子くんの優しい言葉に、頬に火がついたような錯覚に陥る。え、それってつまり、そういうこと?驚いて黒子くんを見つめると彼は再び本に視線を戻してしまって、その表情は窺えなかった。けれど、水色の髪からちらりと覗く彼の耳が、一際赤くなっているのがわかって。そんな姿を可愛いと感じたけれど、きっと私の頬も彼に負けないくらい赤くなっているに違いない。

「…黒子くん、すき」
「…ありがとうございます」

二人して真っ赤になりながらそんなやり取りをしていたことは、きっとクラス中誰一人として気付いてはいないだろう。私と彼の、秘密のお話。

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