「く、黒子くん、お疲れさま!」
「ありがとうございます」

試合後、いつものリストバンドで汗を拭う黒子くんにタオルとドリンクを渡す。爽やかな笑顔で受け取ってくれた彼につられて私も笑顔になるが、内心はドキドキと緊張で破裂しそうだった。
黒子くんは自らを影と称し、決して目立つことのないプレーをする。けれど彼に恋をする私からすれば、チームを支えるそのプレーに一番目がいくし、誰よりもかっこいいと思う。だから、私はいつも試合が終わると黒子くんのところに行く。…まあ単純にみんなが黒子くんのこと忘れてるからっていうのもあるんだけど。

「黒子くん、今日もすごかったよ」
「…そんなこと言ってくれるの、みょうじさんくらいですよ」

黒子くんは、少し困ったように眉を下げて笑った。そんなことないのに。確かに火神くんとか先輩たちの方が目立つプレーをするけど、その花形プレーに繋がるアシストをするのはいつも黒子くんだ。黒子くんがしっかりみんなのこと見て冷静な判断をしてるから、誠凛の派手なランアンドガンスタイルがあるんだ。

「黒子くんが欲しい時にパスしてくれるから、みんなあんなにすごいプレーが出来るんだよ」
「いえ、みんなの実力があってこそです。ボクにはそれをサポートすることしか出来ませんから」
「そんなことない!黒子くんがいるからボールが廻るし、私の中では黒子くんが一番かっこいいよ!」
「…え」
「っあ、」

や、やばい、言ってしまった…!円らな瞳を更に真ん丸にして、驚いた顔で私を見る黒子くん。やだ、どうしよう…!顔にどんどん熱が集中してきて、目に涙が浮かんでくる。恥ずかしさに耐えきれず目を伏せると、くす、と黒子くんが小さく笑った。

「ありがとうございます、みょうじさん」
「…っ」
「みょうじさんは、いつもボクのことを見失わないでいてくれますね」
「…え」
「その…ボクも、みょうじさんが見てくれてると思うと、頑張れるんです」
「!」

俯いていた顔を勢いよく上げる。そ、それはいったい、どういう意味なんですか…!いつも顔色が悪いくらいに真っ白な黒子くんの頬が、心なしかピンクに染まっていて。それは試合の後だからなのか、それとも。バクバク煩い心臓を落ち着かせるように深呼吸してからもう一度黒子くんを見つめれば、黒子くんは天使のような笑顔で私を見ていた。その表情に再び心臓がきゅうっと締め付けられる。

「その、このあと一緒に帰りませんか?」
「え?」
「…もっとみょうじさんと、お話したいんです」
「っ、は、はいっ!」

あまりの緊張に少し声が裏返ってしまった。そんな私に再度優しく笑いかける黒子くんが、かっこよくてかっこよくて。く、黒子くんと、一緒に帰れるなんて。嬉しくて飛び上がりそうになるのを抑えて、私も笑い返しておいた。けれど実際心臓バクバクだし、手汗もすごいし、もう完全にいっぱいいっぱいだ。黒子くんも同じ気持ちだったらいいのになぁなんて、ありえないことを考えた。

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