「あれ、菜緒じゃん」
「…は」

あまりの暑さに身体がやられ、アイスでも買おうとコンビニに来た矢先。店内に入ると同時にはち合わせた元彼に、一瞬で思考が停止した。

「何その反応」
「や、だって…」
「久しぶりに会ったのに。元気?」
「…ん」

案外普通に接してくるこいつに、ほっと胸を撫で下ろした。また変なこと言われるんじゃないかと、僅かながら身構えていたのだ。まあ、今ではこいつに恋心は抱いてないし、何言われても平気だとは思うけど。

「…あいつとは上手くいってんの」
「…まあ」

あいつ、とはもちろん涼太のこと。公園で話して以来会ってないから付き合い始めたことは言ってないのに、私たちが付き合ってることは知ってるらしい。ま、当たり前か。こいつより涼太が大事、みたいなこと言ったし。

「つーかあいつモデルやってんだろ?どうやってあんなの引っ掛けたのお前」
「…その言い方やめてくれる」
「あー悪い悪い。どうやって落としたんデスカ」

落としたっつーか、私がまんまと落とされたかんじだからなあ。最初の印象は最悪だったのにいつの間にか普通に好きになってて、気付けばあいつを恋愛対象として見てて。あいつもあいつでガンガン攻めてきたり、かと思えばバカみたいに優しくしてきたり。散々頼って迷惑かけた私が言えたことじゃないけど、あいつには何かと振り回されたなあ、なんて。

「…ま、今幸せならいいんじゃねーの」
「ん」

至極興味無さそうにさらりと言うこいつ。まあこいつからしたらこの上ない他人事だし、当たり前なんだけど。
…こいつとのことがあったから涼太と親密になって、そして付き合うことになって。涼太と今一緒に居られるのって、よくよく考えたらこいつのおかげなのかも。実はこの男には、感謝しなくちゃなんないんじゃないだろうか。…なんて、考えた私が甘かった。

「お前さ、案外アホだよね」
「は」
「警戒解きすぎ」
「!」

急に腕を掴まれ、次の瞬間には強く引っ張られた。目の前に、こいつの顔があって。

「こういうことされても、文句言えねーよ」

至近距離でそんなこと言われて、さすがに少しテンパったけど。でも、こいつの目を見ればわかる。こいつ、私をどうこうする気なんてない。ただ面白がってるだけだというのは、中学時代ずっとこの男を見ていた私には簡単にわかった。
むしろ、後ろから腕をすごい力で引かれた今の方が、よっぽど驚いた。

「…何してんスか」

一瞬にして元彼から引き剥がされ、真上から聞こえたその声はもちろん涼太のものだった。聞いたことないくらいの低い声に、ぞく、と背筋が震えた。

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