こないだまでインターハイに向けて頑張ってたのに、もう冬の大会に向けて猛練習しているバスケ部。仕事もある涼太は忙しくてなかなか時間が合わなくて、そろそろ本当に寂しくなってきたかなって時。

『もしもし、起きてた?』
「ん、起きてたよ」

ストレッチをしていたら携帯が震えて、涼太から電話が来たことを告げた。機械越しではあるが涼太の声に安心して、少し頬が緩んでしまう。

『遅くにごめん、声聞きたくてさ』
「…おまえいつもさらっと恥ずかしいこと言うのやめろ」
『あ、照れてる』
「…照れたら悪いの。嬉しいんだもん」
『あんたこそ急に素直になるのは反則だとあれほど…』

だって声聞きたいとか、そもそも忙しい中電話くれるのとか、そんなん嬉しいに決まってんじゃん。多忙を極めるこいつとこうして話せるだけでも十分幸せなはずなのに、どうしてか更に強くこいつを求めてしまう。会いたい、の四文字が頭を掠め、言葉にしてしまう前に口を噤んだ。これ以上こいつの負担増やしたらほんとに倒れかねないし。機械越しの声に縋るように、携帯をきゅっと握り締める。

『…ごめん、なかなか会えなくて』
「…大丈夫」

私が何を思っているか、こいつにはお見通しらしかった。そりゃ会えなきゃ寂しいし、少しでいいから会いたいと思う。けどこいつに負担をかけることは、何より嫌だ。

『あー…抱き締めてえー…』
「は、おま、バカじゃないの」
『菜緒だってそう思ってるくせに』
「……」
『え、図星?』
「…調子乗ってると切るぞ」
『待って待ってごめん謝るから!』

悔しいけど、その通りだから言い返せなかった。あのたくましい胸板に顔を埋めたい。抱き締めてほしいと思ってることは否定できなくて、けれど認めるのは恥ずかしくて。

『ほんと、今すぐ会いに行きたいくらいっスよ』
「…明日部活は」
『…あるけど』
「じゃあダメ」
『は、言うと思ったっスわ』

眉を下げて笑う涼太の顔が簡単に想像出来た。そりゃ私だって会いたいよ。でも。

「私とはいつでも居られるけど、部活はそうじゃないでしょ。今しか出来ないんだからそっち優先して頑張んなよ」
『…ん』
「けど頑張りすぎて身体壊したらほんとに怒るからね」
『はいよ、ありがと』

こいつがただの部員とかだったらもうちょっとワガママも言えたかもしれないけど、でもこの人エースだし。学校さえ始まればどうせ嫌ってほど会うんだから、今は我慢しないと。

『菜緒、好きだよ』
「…ん」
『菜緒は?』
「…すき」
『ん、よかった』

好きに決まってんでしょ、バカ。ベッドに置いてあった抱き枕をぎゅうぎゅう抱き締めながら、涼太に会えない寂しさを誤魔化した。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -