※生理ネタ




「んー…」

黄瀬家に入り浸っていると言われてもおかしくないレベルで訪問してしまっている私。今日もお呼ばれされたわけだけど、ご覧の通り私は唸って踞っていた。月に一度の来訪者が、今朝急にやってきてしまったのだ。ふかふかのソファの上で膝に顔を埋める私に、涼太は優しく声をかける。

「あっかいもの飲む?」

その問いかけに声を出すことなく首を縦に振ると、涼太はソファから立ち上がってキッチンへ向かった。なにも言ってないのに、こいつはいろいろと察してくれたらしい。なんとまあ出来た彼氏だこと。

キッチンから戻ってきた涼太にマグカップを手渡される。熱いから気をつけて、なんて子供みたいに扱われ少しむっとしつつ、なんだか嬉しいなんて思ったり。涼太の淹れてくれたココアはあったかくて甘くて、お腹を襲う鈍痛が少しだけ和らいだ気がして。マグカップを両手で持ってちびちび飲む私を、涼太は微笑みながら見つめていた。

「小動物みてえ」
「…うるさい」
「ごめんごめん、褒めてるんスよ」

涼太に頭を撫でられて、それだけでちょっと痛みが引いた気がするんだから私も本当にバカである。涼太は頭を撫でながら、もう片方の手でリモコンを取ってエアコンに向けた。ピッと電子音が響いて、どうやら室温を少し上げてくれたらしい。

「身体冷えたら良くないから。あと見た目気になるかもだけど腹巻きとかするだけでだいぶ違うっスよ」
「…なんでそんな詳しいの」
「姉ちゃんに散々こき使われたんで」
「え、お姉さんいんの」
「あー…そういや言ってないっけ。二人いるんス」

なんか、すごい納得。こいつのやたら女子力高いとことか、女の扱いに慣れてるとことか、その女系家族の中で培われたものなのか。こいつのお姉さんってくらいだから、きっとものすごい美人なんだろうなあ。

「ま、姉ちゃんの話はいいからさ。とりあえずお腹あっためときな」
「ん」

私の頭を撫でることを再開した涼太。大きなその手が頭を滑る度、あったかい気持ちになる。マグカップに口をつけて涼太の手の動きを堪能していると、反対の手でマグカップを奪われて。何事かと顔を向けると、上から優しい口づけが降ってきた。

「つらかったらベッド使っていいから。ここで横になってもいいし」
「…ん」

私に気を使ってソファから離れようとする涼太の、シャツの裾をぎゅっと握ってしまった。だってなんか、離れてほしくない。涼太は目を丸くして、そしてそれを細めて笑った。上げた腰をすとんと下ろし、私の額にキスを落とす。すぐに唇は離れて、頭をぽんぽんと二回叩くと、涼太は深く腰掛け直して雑誌を眺め出した。隣にいてくれる安心感で、お腹の重い痛みがちょっとだけ和らぐ。ぺらぺらとページを捲る涼太の肩に、こてんと頭を乗せた。

「…なーに可愛いことしてんの」
「別にいいでしょ」
「いいけどさ」

私の頭を撫でる涼太の手つきに、とても安心した。こいつといると、なんか全部を包み込まれてるみたいで強い安堵を覚えるのだ。毎月腹部を襲うこの痛みも、こいつに介抱してもらえるなら悪くないかな、なんて。

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