プリに落書きして、切り分けて、ゲーセンを出て。このあとはどうするのかと問うよりも前に、ごく自然に指を絡められ先導されて着いた先は駅だった。そのまま改札を通って電車に乗って、並んで座って。

「この時間空いてるっスね」
「…だからって座ってまで手繋ぐのもどうなの」
「やだな、空いてなくても手は繋ぐっスよ」
「そこじゃねえよバカ」

ぎゅう、と握られた手が熱い。気温のせいで身体も熱いけど、でもこいつと触れてる手のひらだけは、なんだか違う熱さだった。毎度思うけれど、こいつの手は私を安心させたりドキドキさせたり、ほんとに厄介だ。まあそれでもこの手が好きだということも、変えようのない事実だけれど。

しばらく電車に揺られて、涼太に手を引かれ下りる。この駅は、あまりにも見覚えがあった。立ち止まる私に涼太がまた手を引いて、そして着いたのは付き合う前にデートで来た海沿いの公園。すぐ側には観覧車が高々と聳えていて、いつかの雑誌で見たそのジンクスを思い出す。

「結ばれた、っスね」

観覧車に乗れば、永遠に結ばれる。永遠、かどうかはわからないけれど、結ばれたことだけは確かで。潮風に髪を靡かせながら涼太を見上げると、夕日に照らされたその笑顔が眩しくて、目を細めた。

涼太と海を眺めながら、以前のデートを思い出す。周りはカップルだらけだったけど私たちはまだ付き合ってなくて、なんか微妙に距離あけて海を見てて。今は、こんなにくっついてるわけだけど。

「菜緒さ、前来た時俺のこと男として見てるっつってたじゃん」
「…まあ」

こいつに、いつになったら男として見てくれるのかと問われた時。私はこいつを、とっくに異性として意識してて。必死なこいつに嘘をつくことは出来なくて、素直にそう告げたわけだけど。

「実際さ、あの時もう好きだったりした?」
「!」

痛いところを突かれて、押し黙る。だってそんな、今更訊くことないじゃん。ん?なんて顔を覗き込まれて、私は俯くことしか出来なくて。私のこの反応を見れば答えなんてわかるだろうに、こいつはどうしても私の口から聞きたいらしい。

「どうなの?」
「…あの時は、よくわかんなかったけど…今考えるとたぶん、好きだった、のかな」
「へえ〜…?」
「…あーもう!好きだったよ!」

これで満足?と問えば、涼太はにっこりと微笑んできて。確かにあの時はほんとにいっぱいいっぱいだったし、自分の気持ちが何なのかよくわかってなかったけど、でもあんなの、どう考えたって恋だ。手握られても抱き締められても耳とか唇舐められても嫌だと思わない時点で、好きに決まってるじゃんか。

「顔赤いっスよ」
「誰のせいだよ」
「俺スか」
「他に誰がいんの」

あんたのことが好きだから赤くなるんでしょ。頬に手を伸ばされ、するりと撫でられて。涼太の顔は少し赤く染まってて、まあ私も人のこと言えない程度には赤いんだろうけど。

「観覧車、乗ってこっか」
「…ん」

涼太に手を引かれて、その広い背中を眺めて。以前はただ広いと思うだけだったこの背中が、こんなにも愛しくなるなんて。

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