昼休み、本当に黄瀬は迎えに来ていつも通り連れ出され、いつもの場所で昼食を摂り、そして残りの時間を適当に話しながら過ごしていた。

「ね、日曜あいてる?」
「…あいてるけど」
「じゃあウチ来ねースか」

組んだ指を見つめながら、さらりと黄瀬は言ってのけた。ウチ、ってのはつまり黄瀬家のことで、前にも行ったことがあるとはいえ、こういう関係になってから行くのはもちろん初めてで。

「…あんた部活は」
「試合の次の日だからオフなんスよ」
「じゃあ休みなよ、そのためのオフでしょ」
「月曜からはまた次の試合まで休み無しだから遊べんの日曜しかないんス」
「だから、」
「まだ言うんスか?察してよ」

指を組んでは解き、また組んでを繰り返していたはずの黄瀬の手が、いつの間にか私の頬に移動していた。黄瀬の琥珀色の瞳に囚われ、呼吸することですら緊張してしまう。艶かしいその表情に、鼓動はどんどん加速してゆく。

「来てよ、ね?」
「…ん」

ああ、また絆された。けれどこんな目で見つめられて、断れるわけがないじゃんか。私の返答に口角を上げた黄瀬は、ゆっくりと私に迫ってきた。頬に触れる手が輪郭を滑り、私の顎をそっと掴む。優しいけれど力の入ったその手に強制的に上を向かされ、すぐに黄瀬の唇が降ってきた。そっと触れて、離れて、また触れて。恥ずかしくて堪らないのに逃れることが出来なくて、小さく黄瀬の肩を押す。私の小さな抵抗をしっかりとキャッチした黄瀬は、名残惜しそうにではあるが素直に唇を解放してくれた。

「…キスだけでそれとか、ほんとどんだけ耐性ないんスか、あんた」

呆れたように笑いながら、あやすように私の頭を撫でる黄瀬。実際経験も何もないんだからしょうがないじゃんバカ。赤い顔とか目に溜まる涙とか、生理的な反応であって自分じゃどうしようもないんだっつの。悔しくてキッと睨み上げれば、黄瀬はまた笑って、私を優しく抱き締める。

「ごめんって、ホラ落ち着いて」
「…うっざ」
「うん、ごめん」

子供扱いしてんじゃねーよって言ってやりたい気持ちもあるけど、でも黄瀬の腕の中が心地良いと感じている部分もあって、結局は黙って黄瀬の包容を受け入れる。なんか悔しいけど、やっぱり私はこいつが好きなんだなって、再確認した。

「日曜、迎えに行くから、待ってて」
「…ん」

言いながら額に唇を落とされ、内心慌てつつも平静を装って返した。いちいち取り乱してたらこいつの思うツボだし、何より癪だ。察しの良い黄瀬にはバレてるかもしれないけど。
日曜何着ていこうかななんて、抱き締められながらぼんやり考えた。

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -