「やっ、ちょ、何」
「そそるんスよ、あんたの首筋」
「っ知らな、っ」

生温い舌が首を這い、時折唇を落とされる。そそるとか、なにこいつまじで。こいつの舌が触れる度、ぞく、と背筋が震える。このままじゃやばいなんてことは簡単にわかって、逃げようとした時にはもうこいつの腕がお腹に回されていた。

「ん、菜緒、いい匂い」
「や、めろ、ってば!」
「抵抗されると燃えるっつったっしょ」
「っ」

身を捩ってなんとか抜け出そうと試みるも、こいつのその一言で動きが止まる。けど抵抗しなきゃこのままやられるだけだし、どうすればいいわけ。だんだん調子に乗り始めた涼太は唾液の音なんか立て始めて、わざとだってわかってるのにまた背筋がぞくぞくして。もうほんと、勘弁してよ。

「…あ、そうだ」
「な、に」

やっと涼太の舌が離れて、解放されたことに安堵の息を洩らす。けれどそんなものは一瞬で、腰を掴まれ体を反転させられた。なんだか気恥ずかしくて顔を逸らすけれど、これからどうせろくでもないことされるんだろなと内心溜め息をつく。

「キスマーク、つけてよ」
「…は」

突然の頓狂な提案に、我ながらかなり間抜けな声が出た。だってそんなん、私つけたことない、し。ぽかんとしていると涼太はほら、と身体を近づけてきて、どうしていいのかわからなくて身体が硬直する。

「あんた、仕事あんでしょ」
「このへんなら服で隠れるっスよ」
「…部活もあるし」
「大丈夫、見えない見えない」
「着替える時とか、」
「いーから」

ブイネックを少し引っ張って、胸元にキスマークをせがむ涼太。急にそんなこと言われても、付け方なんてわからない。あたふたしていると涼太にそっと後頭部を持たれ、胸元へと誘導された。

「はい、吸って」
「つけたことない、から、」
「ちょっと強めに皮膚吸えばいいんスよ」

そんなん言われたって、と戸惑っていると涼太に早くと目で訴えられる。追い詰められると涙が出てくる癖は相変わらずで、涙目になりながらも涼太の胸に唇を落とした。だってやんないと後々怖い、し。

「ん、そう、吸って」
「っ」

吸うったって、こいつの身体こんな筋肉質なのに上手く吸えるわけがない。そもそも力加減もよくわかんないし。唇を離すとやはり上手く出来ていなかったらしく、涼太の胸には私の唾液が付いているだけだった。

「もうちょい強めにやってみて。ほら、もっかい」
「や、無理、」
「やって」

なんでそんなキスマークに拘るんだよこいつ。高圧的なその態度が、逆らってはいけないということを告げる。こんなことするだけで恥ずかしいのに、上手くつけらんないとか余計恥ずかしいから勘弁してほしいのに。溜まった涙を溢さぬよう再び胸元を口に含む。けれどやっぱり、そう上手くはつけられなかった。強く吸うとか言われても、どんくらいかわかんないし。

「もっかい」
「や、も、許して」
「付けられたら、ね」

後頭部を固定されて、逃げることは許されない。許しを乞うように涼太を見上げるが、意地悪く楽しげに笑うこいつが解放なんてしてくれるわけはない。諦めてもう一度、今度はさっきよりずっと強く吸い上げれば、やっと涼太の胸元に赤い印が刻まれた。思ったよりくっきりと付いてしまって、恥ずかしいとか、痛かったかなとか、色々な感情が頭を回る。けれどこいつが嬉しそうに笑うから、よかったのかな、なんて。

「よく出来ました」

涼太は私の後頭部を固定したまま、私の唇を奪った。すぐに舌が侵入してきて腰が引ける。すると空いていたもう片方の手で腰を抱き寄せられ、涼太に密着する形になった。手の置き場に困って、涼太の背中に回して控えめにシャツを掴む。するとこいつは分かりやすく舌を更に絡めてきて、経験の乏しい私はそれに応えることすら儘ならない。ざらざらした舌が口内を暴れて、こいつの息遣いがだんだん荒くなってきて、私はまた、ぶるりと震えて。

「ベッド、行こっか」

涼太に抱えられ、寝室に向かいながら、私の心臓はバクバクと忙しなく動いていた。

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