「ね、今日どうする?」

お風呂を上がって髪を乾かして(俺がやると聞かない涼太に無理矢理乾かされた)、ご飯を食べて一段落ついて。テレビをぼんやり眺めていると、食器を洗い終えた涼太が黒いエプロンを外しながら私の正面に腰掛けた。

「俺今日はオフだから何でもしてあげられるけど。このままのんびりしてもいいし、身体辛かったら帰って休んでもいいし」

帰るんだったら送るよ、と微笑む涼太。んー…なんか、帰るにしても微妙な時間だし、でもこのまま居座って迷惑かけるのもなあってかんじだし、どうしよう。

「言っとくけど、迷惑とかはないから」
「…いつも思うけどなんで考えてることわかんの」
「愛の力?」
「聞いた私がバカだった」
「ちょっとちょっと。で?どうしたい?」

小首傾げて尋ねてくるこいつは本当にあざとくて、でもちょっと可愛いなんて思っちゃうから悔しくて仕方ない。全部計算済みのくせにかわいこぶんな。私も私で計算ってわかってるくせにきゅんとすんな。

「…埋め合わせ、して」
「え」
「会えなかった分、一緒にいたい」

思考と行動は一致してはくれないらしく、私の口からは涼太に甘えるような言葉が溢れていた。言ってしまったものはもう仕方ないけれど、冷静になってみると飛び上がるくらい恥ずかしくて顔を背けた。涼太はというと深く溜め息をついて、私の頭に手を伸ばす。

「まーたあんたはそうやって可愛いことを…」
「は」
「いーよ、今日は一緒にいよ。いくらでも埋め合わせする」

私の髪を梳くように指を通しながら、涼太はにこりと微笑んだ。…こいつがこんな表情で笑うなんて、前までは想像もつかなかったけど。大嫌いだったこいつと付き合うようになって、その、することもして、こんな関係になってることに驚く。姿を見るだけでげんなりしていたのに、今では会えないと寂しくなるんだからびっくりだ。人ってこんなに変わるのか。

「じゃあどうしよっか、外は無理っしょ?」
「ん…ちょっとキツい」

めちゃくちゃ痛いとかではないけど、腰が重くてあまり歩きたくない。そもそも涼太だって疲れてるはずだし。

「ひたすらキスするとかもありだけど」
「調子のんな」
「えー割とマジで言ってんのに」
「キモい。却下」
「…デレたと思ったら急に手厳しくなるっスよね、あんた」

あんたがキモいのが悪いんだろ。頬杖をつきながら呆れてそう言えば、ひでえ、なんて言いながら涼太は私の空いている方の手にその大きな手を重ね、愛でるようにゆっくり撫でた。

「ま、今日はゆっくりしよっか」
「…うん」

特に何もしなくても、二人でいられるだけで充分幸せだ。涼太が目を細めて優しく笑うから、私もつられて笑顔になる。涼太の手は私を撫でることをやめ、指先を絡め出す。それに応えるように私も指を絡め、しっかりと見つめあった。寂しい思いさせられた分、しっかり充電させてもらわなきゃ。
その日は何をするでもなくずっと涼太とくっついて過ごし、一緒にいられる幸せを噛み締めた。

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