試合終了のブザーが鳴った。海常は、涼太は、負けた。

試合が終わって選手が退場して、観客たちも会場を後にする。周りが続々と帰っていく中、私は立ち上がることすら出来ずにいた。身体に、力が入らなかった。
周りから人がほとんどいなくなった時、ポケットの携帯が再び震えた。脱力した腕を懸命に動かして携帯を取り出す。着信は涼太からだった。

「もしもし」
『…まだいる?』
「うん、いるよ」
『…さっきんとこ、来てほしい』
「わかった、待ってて」

通話を終了したら、すぐに身体が動いた。さっきまで全然力が入らなかったはずなのに、私の足は感心するほどの速さで涼太の元へと向かう。やっと、涼太からのサインが送られてきた。何をしてあげるのが正解かなんて正直わからないけど、涼太に今すぐ会いたかった。

「涼太!」

さっき涼太と会ったところに行くと、やはり涼太は壁に寄り掛かっていて。憂い顔の涼太になんて声をかけたらいいのかわからなくて、とりあえず傍に歩み寄る。

「他の人たちは?」
「解散して個々で帰った」
「そっか」

さらさらの金髪が俯くことで垂れ下がって、涼太の切れ長の目を覆い隠す。目元は影になってよく見えないけど、口だけは笑っていてそれがまた私を困らせた。

「…見てたよ」
「…ん」
「ちゃんと、見てたよ」
「…ん」

涼太は、何も言わなかった。私はこの人に、一体何をしてあげられるだろうか。押し黙って俯くこいつを、癒す術を私は知らない。情けないけれど、どうしていいのかわからなかった。

「りょーた、私はどうすればいい?」
「は?」
「変に気遣われても嫌だろうし、かといってなんも気にしないでへらへらしてんのは違う気がするし、私にはどうしたらいいかわかんないから」

こんなこと本人にきくのどうかと思うけど、でも変に判断してこいつを傷つけるようなことはしたくなかった。一瞬ポカンとした涼太も私の言葉を聞いてすぐに憂いを帯びた笑顔に戻り、私の胸は締め付けられる。

「…んじゃ、抱き締めて」
「ん、わかった」

弱った自分を隠すように笑顔を貼り付ける涼太が痛々しくて。涼太の言葉に頷いて体格差のありすぎるその身体を抱き寄せると、涼太は私の肩に頭を乗せた。ゆっくりと背中を擦ると涼太は私の背中に縋るように腕をまわして、肩からは鼻を啜る音が聞こえてきて。

「…かっこよかったよ、お疲れさま」

小刻みに震えるその身体を、包み込むように力を強めた。

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