「よっしゃ、男気ジャンケンすんぞ!!」
「勝った奴全員にジュース奢りな!!」

さすが中学生と言うべきか、クラスの賑やかな部類の男子が総じてジャンケンをする姿は微笑ましいものがあった。アホだなあ、と思うと同時に、楽しそうだなあ、なんて思って、ちょっと羨ましくなって。

「うっわやべ勝っちゃったよ!!」
「こえー!奢りたくねー!」

ジャンケンをする度に減っていく人数。それと反比例してどんどん盛り上がっていく男子集団。その中心でわちゃわちゃやってる数人の中には、気になるあいつの姿もあって。

「ちょ!マジで勝っちゃったら今月ピンチなんスけど!」
「知らねーよ乗ったおまえが悪い!」
「うっわちょっと本気で負けらんねーっス!!いや負けたいんだけど!」

一際目立つ金髪を揺らしてオーバーアクションをする彼は、私の好きな人。やべえやべえ言いつつすごく楽しそうで、そんな姿を見ていると自然と頬が緩んでしまう。大柄なくせに可愛くて、ちょっとずるい。

「あ、また黄瀬くんのこと見てる」
「え」
「ほんと好きだよね」
「好きじゃないから!」
「またまたー」

友達にからかわれて、必死に否定しているうちに男気ジャンケンは決着がついたようだった。頭一個分飛び出てるはずのあいつの姿がなくて、よく見たら頭抱えてしゃがみ込んでて。あんだけ騒いで結局勝つとか芸人かおまえは。マジかよー…なんて溢しつつ、黄瀬は立ち上がってこちらにやってきた。ちなみにあいつの席は私の隣である。鞄から財布を漁る黄瀬を何の気なしに眺めていると、視線を感じたのかその琥珀色の瞳と目が合って。どんまい、なんて薄ら笑いで言ってやれば、うるせーよと頭を財布で軽くではあるが殴られた。

「ほんと仲良しだよね」
「隣だから喋るだけだってば」
「黄瀬くんもなまえのこと好きだと思うんだけどなー」
「まさか。てか黄瀬くんもって何、私好きじゃないからね」

黄瀬が教室を出た途端にまた友達に突っ込まれ、受け流しつつも内心ドキドキだった。財布で軽く叩かれたのもちょっときゅんとしちゃったし、黄瀬も好きとか、そんなわけないとは思いつつ第三者からそう見えているのなら正直嬉しいし。
ないない、と友達のしつこい冷やかしを流しつつ教室のドアに目をやれば、ちょうど黄瀬が帰ってきて。両手いっぱいにジュースを抱えたその姿は、少し可哀想ではあるけどなんだか可愛い、というか面白い。半泣きでジュースを抱える黄瀬を、こっそり写メっておいた。

「はー…マジ大出費っスわ」
「おっつー」
「るせ」

男子みんなにジュースを配り、とぼとぼと財布をしまいに席に戻ってきた黄瀬はやっぱりちょっとへこんでた。うーん、確かに一本百円だとしても、あの人数に奢るのはかなりの出費だよね。
財布を戻して鞄を机の横に掛け直した黄瀬の手には、一本ジュースが握られていて。なんだろ、自分で飲むのかな、なんて思って見つめていたら、それが私の机にポンと置かれた。え、と黄瀬を見上げる。

「なにこれ」
「ジュースでしょ」
「そうじゃなくて!」

そういうこと言ってんじゃないっつの!へらりと笑う黄瀬に、きゅんと胸が音を立てる。

「さっきずっとこっち見てたから、飲みたいのかなって」
「え、いいよそんな、お金ないんでしょ」
「って言われてももう買っちゃったし。まあ隣の誼みってことで、ドーゾ」

黄瀬はそれだけ言って、また男子集団の中に戻っていった。見てたのバレてたのも恥ずかしいし、金欠らしいのに申し訳ないし。何よりわざわざ私に買ってきてくれたという事実が、私の頬を熱くさせた。男子の輪の中でケラケラ笑ってるあいつを尻目に飲んだジュースは、やけに甘酸っぱかった。




こんなかんじの連載がしたいけど需要なさそうだから考え中。周りを見下してる黄瀬くんじゃなくて年相応にきゃっきゃしてる黄瀬くんが書きたかった

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