※白龍目線


アリババ殿のことは信頼してるし、尊敬もする。正義感が強くて、実力もあって、仲間思いで。バカなところや多少めんどくさいところが玉に傷だが。

「なあなあ白龍」
「…何ですか」

その欠点が今、俺相手に存分に発揮されている。さっきから物思いに耽っているのも溜め息ばかり吐いているのも見ていればわかるが、面倒なことになるのは分かりきっているから敢えて声をかけなかったのに。わざわざ俺に話しかけた理由もこれから話される内容も容易に想像がつく。はあ、と溜め息を溢してから、アリババ殿の話に耳を傾けた。

「…なまえってよ、どんなヤツが好きなのかな…」

やっぱり。十中八九なまえ殿のことだとは思っていたが、あまりに予想通りすぎて呆れてしまう。見ての通りアリババ殿はなまえ殿に想いを寄せていて、しかしヘタレであるが故何も行動を起こせないでいるのだ。なまえ殿を前にするとあからさまに緊張し出すその姿を最初こそ微笑ましいと思っていたが、今となってはイライラの対象でしかない。

「そんなこと言ってないで、さっさと好きだと伝えればいいじゃないですか」
「す、すすす好きじゃねえよバカヤロー!!」

何を今更。ヘタレもここまでくると病気だ。再び溜め息を洩らしなまえ殿たちのいる方を見つめる。なまえ殿とモルジアナ殿は二人楽しそうにお喋りをしていた。俺の視界に常にモルジアナ殿がいるように、アリババ殿の視界には常になまえ殿が存在するのだろう。

「アリババ殿がなまえ殿をどう思おうと勝手ですが、なまえ殿も同じ気持ちとは限りませんからね」
「なっ…」
「なまえ殿は聡明で、強くて、それでいて可愛らしい方です。彼女を好きになる人なんていくらでも現れます」
「白龍おまえ…っ、まさかなまえのこと好きなのか!?」
「なんでそうなるんですか」

心からの溜め息が溢れる。そんなに焦りを露にするくらいなら、早く気持ちを伝えればいい。それほどまでに、なまえ殿のことを好きなのだから。

「いつまでもそんなことしてたら誰かにとられますよ。いいんですか?」

アリババ殿の目を見てそう言えば、彼は目を見開いて、そしてなまえ殿を見つめた。ありがとな白龍、と早口で言って、俺の元から去っていく。まったく、人の手を借りなくても自分から行動出来るようになってほしいものだ。世話が焼ける、なんて小さく溢しつつ、俺は自分が笑っていることに気がついた。なんだかんだ言いつつも、アリババ殿もなまえ殿も、俺にとって大事な友人であることには変わりないのだ。二人が上手くいけばいいと、広い空を見つめながら思った。

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