「黄瀬くん、好きですっ」
「…ありがとっス。けどごめん、付き合えないっスわ」

小宮と噂になりはじめてから、多少ではあるが減っていた告白。今日は久しぶりに呼び出された。女子に呼び出される時点で何言われるかなんてわかってるし、その返事も決まってる。そして、そこからの女子の返しも。

「そう、だよね……あの、じゃあお願いがあるの」
「なんスか?」
「あの、抱いてほしいの」

一回だけだから、抱いてくれたら忘れるから。そう口々に言う女たちは、他のセリフは言えないのだろうか。その願望を聞き入れてやっていたら遊び人なんて呼ばれるようになっていたのだから、俺も不幸な人間である。まあ、俺も性欲を吐き出す対象が都合よく手に入って便利だと思っていたことは否定しないが。
熱の籠った視線で俺を真っ直ぐ見つめる女。告白よりも、こっちがメインだったことは明らかだ。前までなら二つ返事で了承していただろう。が、最近の俺はどこか変だった。どんな女に誘われても、そういう気分に全くならない。今も、むしろ萎えている。

「悪いけど、勘弁っス」
「え?」

女は固まって俺を見た。なんで、と心底思っている顔だ。あんた程度じゃ勃つもんも勃たねえよ、なんて言えはしないが、たいした容姿もないくせになんで抱いてもらえると思ってんだか。確かに前の俺なら抱いてたかもしんないけど、今は興奮しない自信がある。予想通り何で、とすがりついてくる女を振り払い、一瞥。

「好きでもねえ女抱く程萎えることってねえんスわ。んなことにわざわざ体力使ってられっかよ」
「…っ、けど、前までは抱いてたよね?」
「しつけーな。前までは、だろ。あんた程度のレベルでヤってもらえると思ってんじゃねーよ」
「っ、もういいっ!」

これ以上の罵倒に耐えられないと踏んだのか、女はそう吐き捨て走り去って行った。あー…うっぜ。どうせ他の女に愚痴って喚き散らすんだろ、だから女は嫌なんだよ。

もしこれが彼女だったら、俺は相手をするんだろうか。
俺が女の誘いを断るようになったのは、間違いなく小宮と関わってからだ。女に求められる度彼女が頭をちらついて、だんだん目の前の女に萎えてくる。アイツだったら、こんなバカな女を見てどう思うだろうか、なんて考えてしまうのだ。

俺は彼女を、どう思っているのか。そして彼女は俺を、どう思っているのか。人の気持ちも自分の気持ちも、ちゃんと考えたことなんてないからわからない。俺は彼女を、どうしたいんだろうか。

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