定期的に開催される屯所の大掃除。私が給仕を担当してることもあって今回一番隊は食堂の掃除を任された。…厨房自体はなるべく綺麗にしてるんだけど、テーブルの方はそうもいかない。みんなこぼしたものとか拭かないからめちゃくちゃ汚れてる。


「誰だ納豆こぼして片付けなかった奴ァ、ぶっ殺してやろうか」
「いや隊長もこぼして片付けないことザラにありますよね」


総悟のご機嫌がとんでもない傾斜を示してらっしゃる。確かに食堂の掃除はつらいものがあるけどさ、厨房が綺麗なだけまだマシだと思うんだよね。私が来る前はとんでもなかったらしいし。ひどいときハエ飛んでたらしいし。ったくなんて不衛生なんだ。


「厨房の細かいとこは私がやっとくんで、皆さんはテーブルと床をお願いします」


へーい、なんて野太い返事が聞こえる中厨房へ入る。普段から気をつけてるとはいえ、やっぱり流しの角の方は汚れてたりするしところどころヌメヌメしてたりする。あーあ、汚いけどやらなくちゃ。


「寿乃ちゃん」


髪を束ねてタワシを掴みさあやるぞと思ったところで背後から声をかけられた。もう、今ちょうど始めようとしたとこだったのに。なんとなくやる気を削がれてしまいつつも振り返ると、見覚えのない人がすぐ後ろに立っていた。


「?あの…すみません、失礼ですけど…」
「ああ、わからないかな?六番隊の齊藤っていうんだけど、俺のとこはもう終わったから手伝うことあるかなって」
「あ、ありがとうございます。じゃあテーブルの方手伝ってもらえますか?一番隊みんなそっちにいるので」
「あ、っと……あの、そっちにも行ったんだけど、やることないって言われて」
「え、そうですか?」


うーん、掃除めんどくさがってるみんなが断るかな?特に総悟なんてとっとと押し付けてサボりに行きそうなのに。


「へェ、誰に言われたんでィ」
「え」
「あれ、隊長」


突如、どっから湧いて出たのか総悟が現れた。え、それより、なに、断ったの総悟じゃないの?じゃあ誰に言われたんだろ。
不思議に思って、えっと……齊藤さん?を見てみると、何故だか彼は冷や汗を垂らして狼狽えていた。え、どうしたの。


「そういやぁさっき六番隊の奴が忙しそうにあっち通ってたが…そうかィ、もう終わったのか」
「え、っと……あの、俺、戻ります!」
「え」


そう言い残すと齊藤さんは猛ダッシュで食堂から出て行った。え、なんだったの結局。


「アホか、男の下心くらい見抜きなせェ」
「下心?」
「…なんでもねェや、いいから掃除続けろィ」
「?」


なんなんだ、まったく。

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