「寿乃さん、行きましょうか」
「…はい」


高そうなウエディングドレスを身に纏い、西園寺さんの手を握った。私は今から、西園寺寿乃になるのだ。

てっきり白無垢かと思っていたけどドレスの方が似合いそうだからと洋風になった式。私もドレスに憧れてたからありがたいけど、我が儘を言わせてもらうなら総悟の前で着たかった。この期に及んで未練がましいのはわかってる、けどやっぱり思ってしまうものは仕方がない。


ヴァージンロードを歩き、式の参加者のみなさんに迎えられる。真選組の面々、西園寺家の関係者さんたち。…あまり、温かい雰囲気ではなかった。主に、西園寺家の方が。

まあ、当たり前のことではある。こんな荒っぽい集団の、田舎出身の小娘が嫁になるんだから。これから、大変なんだろうな。自分で決めたことではあるけれど、正直に言うと気が重い。そんなことを考えているうちにヴァージンロードは終わりを迎え、いよいよ誓いを立てなければならない。私は本当に、西園寺家の人間になるんだ。西園寺さんの誓いの言葉が終わり、いよいよ私の番。牧師さんが私に、誓いますかと問いかける。
さようなら、真選組のみんな。…さようなら、総悟。


「…誓いま」
「ちょっと待ったァ!!」


バン!!と式場の扉が開き、みんなが一斉に振り返る。例に漏れず私も扉の方を見ると、そこにいたのは予想外の人たちだった。


「悪ィな。幸せぶち壊しに来てやったぜ」
「寿乃!!まだ誓ってないアルな!?」
「寿乃さん!結婚する前に、この人の話を聞いてください!」
「銀さん、神楽ちゃん、新八くん!」

「……寿乃」
「そ、総悟…」


万事屋トリオと、総悟の姿がそこにはあった。珍しくバズーカを構えていない総悟は、真剣な顔で私を見つめる。


「…俺にしろ、寿乃」
「え?」
「…他の男と結婚なんかすんじゃねェ!!俺がお前を幸せにしてやる!!」
「そ、うご…」
「来い、寿乃!!」


腕を広げて、私を待つ総悟。そんなこと、今言うなんて、ずるいよ。涙が溢れて、視界がぼやける。ぽかんと呆ける西園寺さんを尻目に、ヴァージンロードを駆け出した。


「総悟っ!!」


ウエディングドレスをたくしあげて走り、総悟に飛びついた。私をしっかりと受けとめ、ぎゅうっと強く抱き締める総悟。私も負けじと、総悟をきつく抱き締める。


「遅い、バカ…」
「…悪かったよ」


抱き合う私達の姿に、はっとして追ってきた警備の人たちを万事屋トリオが食い止める。さっさと行け!と叫ぶ銀さんに恩に着やすぜ旦那、と返すと、総悟は私を俵かつぎにして走り出した。


「ちょ、そ、総悟!」
「うるせえ。じっとしてなせェ」
「で、でも!」
「それ以上騒ぐと放り投げまさァ」
「!!」


この姿で放り投げられてはたまったものではないので、慌てて両手で口を押さえる。外に出ると一台の車が用意されていて、その助手席に放り投げられた。結局投げるんじゃん!バカ!


「行くぜ」
「行くってどこへ…」
「いいから黙って着いてきなせェ」
「わっ!」


ぐいん、と強くアクセルを踏むと、とんでもないスピードで車は走り出した。いった、頭打った…!

バックミラーから、式場から駆け出した西園寺さんの姿が見えた。

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -