「近藤さん、あのね、私…」



近藤さんにお話しして、それから土方さんにも言っておいた。私の、これからの話。


「おめーはそれでいいのかよ?総悟は…」
「なんでそこで沖田隊長が出てくるんですか。大丈夫ですよ、私決めましたから」


私は、西園寺家に嫁入りすることを決めた。戦闘ばかりのこの真選組で過ごしてきた私だけど、ミツバさんに教わった礼儀作法やお料理なんかにはそれなりに自信がある。


「…それにしたって、何も嫁入りするこたねーだろ。籍入れるだけとかよ」
「いえ、中途半端なことしたら、私の整理がつかなそうで」


結婚するのなら、ちゃんとしっかりしたい。籍だけ入れてこのままここに留まったら、きっと意志がぶれるから。気持ちが、揺れてしまうから。


私がここを去ったら、総悟はどう思うだろうか。人並みに寂しさを感じるのだろうか。それとも、本当に無関心なのかな。…こんなこと考えてちゃだめなんだろうけど、最後くらい、総悟のことを考えさせてほしい。私の大切な、大好きな総悟。


ミツバさんみたいに、総悟の心の拠り所になりたいって、思ってたっけな。私、総悟にとってそういう存在になれてたんだろうか。私が総悟を大切に思うように、総悟も私を大切な存在だと、一瞬でも思ってくれたことがあったかな。


「…私がいなくなっても、給仕とか掃除サボったらだめですよ」
「おー、言っとくよ」
「局中法度に加えてください」
「考えとく」
「洗濯は何回やっても追い付かないくらいですから、頻繁にやってくださいね」
「ん」


他にも言っておかなきゃならないことは山ほどある。出てくまでにまとめておかなくちゃ。…なんか、言葉にしたら、急に現実味を帯びてきてしまった。私は、ここを出ていくんだ。


「土方さん、今までありがとうございました」
「…オウ。嫌になったらいつでも帰ってこい」
「はい。…じゃあ私、自室戻りますね」


今度こそ、みんなとお別れしなくちゃなんだ。会えないわけではないけれど、あまり顔を合わせることはなくなってしまう。武州にいた頃はまだ会いに行くんだって希望があったけど、今度はそれすらない。鼻の奥がつんとして、これ以上ここにいるのは無理だった。


「…いいのかよ、総悟」
「…知りやせんよ」


総悟がそこにいたことには、気付かなかった。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -