「あ、」


洗濯を別の隊士さんに任せて町で捜索をしていると、見慣れたアイマスクが目に入った。呑気に寝っ転がりやがってこのヤロウ!


「またこんなところでサボりやがってこのクソサド!ふざけんなよおまえええええ!」
「上司に向かって暴言たァどういう了見でィ」
「え」
「どうしてやろうかこの雌豚」
「いや隊長も上司の土方さんに暴言どころか暴行加えてますけどね!てかなんで起きてんの!」
「寝てるとでも思ったかボケ」
「いや普通思うだろ!」


完全に寝てると思ってた総悟は起きていらっしゃったようで。
まだ寝るサボると聞かない総悟を必死で説得してやっと屯所に帰れることになったのはもう空も茜色に染まり始めた頃だった。子供か。


「…寿乃」


屯所へ向かう道中、不意に総悟が真面目な声色で私を呼んだ。…この声は、いつもの総悟じゃない。上司としてじゃなく、幼馴染みとして私に声をかけてる。それを感じた私も、部下としてではなく幼馴染みとして返事をする。


「…なに?」
「…江戸には慣れたかィ」
「うん、まあ…」
「真選組は」
「うん、みんないい人だから、大丈夫」
「…ならいい」


私の一歩前を歩く総悟は、振り返ることなく静かに話す。彼の背中は武州にいた頃より遥かに広くて、たくましくなっていて。総悟が、私の知らない総悟になってしまったような錯覚をしてしまうけど、でも、こうして私を気遣ってくれるところがやっぱり総悟だなあと思う。

夕焼けに照らされながら、ゆっくり総悟の後ろを歩いた。

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