私は、本当にいろんな人に支えられてるんだ。
「というのを先日再確認しまして」
「そうだな。俺もいろんなヤツに支えられて生きてるぞ。俺が間違った方にいったらすぐに引き戻してくれるしな!」
「私が今こうして近藤さんを屯所に連れ戻してるようにですか」
「そうだな!でも俺がお妙さんのところに行くのは別に間違った道ではないんだぞ!」
「すいませんお妙さんから連絡きたんでマジで殺すぞ的な内容の」
見廻り中だった私に一本の電話が入った。屯所からでその内容は"局長どうにかしないとお妙さんがここを潰しに来るらしい"というもの。本気で真選組存続の危機だと感じた私は見廻りを中断して近藤さんを捕まえ屯所まで引きずってるところです。ほんとなにしてんだこの人。
「まったくもう…いろいろ大変な時期なのに何してんですか」
「真選組に楽な時期なんてないさ!寿乃ちゃんは個人的に大変みたいだけどな」
「…そうでもないです」
「人に弱みを見せることは悪いことじゃないんだぞ」
近藤さんの落ち着いた声が、耳に響く。この人はほんとに、お父さんみたい。両親のいない私の親代わりをしてくれたのはミツバさんだけじゃない。この人の包容力は、幼い頃からいつも私を安心させてくれた。
「…いろいろあって、へこんでて」
「うん」
「みんなが心配してくれてるって聞いて、申し訳ないと思ったけど、でもすごく嬉しくて」
「うん」
「…もういい加減立ち直らなきゃって。いつまでも甘えてられないし」
「寿乃ちゃんはもう大丈夫なのか?」
「大丈夫です。…今日、ちゃんとけじめつけてきます」
そうか、と近藤さんは控えめに笑ってみせた。もう、人に心配をかけるのは今日が最後。今日で終わりにするんだ、全部。
「…総悟、いい?」
その日の夜、総悟の自室を訪れた私。障子越しに声をかけると、中から「入れ」と返事がきこえた。そっと障子を開け、総悟を見る。
「…あれ?ごめん仕事中だった?」
「見りゃわかんだろ」
「ごめん、すぐ済ますから」
総悟は珍しく仕事中で、眼鏡をかけて書類に目を通していた。いつもこうならいいのに…。総悟がサボった仕事は全部私たち部下にまわってくるのだ。
「なんの用でィ」
「あのね、お風呂のことなんだけど、私銭湯に行くことにしたんだ」
「…ふーん」
あの日以来総悟に見張りを頼むのは気まずくて、近藤さんがストーカーしに行く前に捕まえて頼んでいた。けれど、やっぱりそれは甘えてると思う。近藤さんに頼むことも、そもそも誰かに見張ってもらってお風呂に入ることも。
「だからもう見張りとかは大丈夫だよ。今まで毎日ありがとう」
「おう」
総悟は、全く私を見ない。書類から一度も目を離すことなく、あくまで淡々と返事をする。…本当に私のことなんて、どうでもいいんだね。
「…総悟」
「あ?」
「私ね、総悟が…好き、だったよ」
「…、」
「…今までありがとう」
そう最後に告げ、総悟の部屋を出た。
大丈夫、これでいいんだ。