どうも山崎です。周りよりもちょっと控えめなだけなんだと自分に言い聞かせることで自我を保ってる山崎です。そんな山崎の仕事は主に観察なので、周囲の物事に関しては結構敏感なつもりです。

そんな観察山崎が今一番気にかけているのは、最近寿乃ちゃんの様子がおかしいということ。給仕係を担う寿乃ちゃんは食事の時間になるとカウンターでみんなにごはんを配るんだけど、最近は配給中急に厨房の奥に姿を消したりする。それが決まって沖田隊長が食堂に来た時だと気付くのに時間はかからなかった。


「あの、土方さん…寿乃ちゃんと沖田隊長、どうかしたんですか?」
「さァな」
「でもあれ、明らかに何かしらありましたよね。あの寿乃ちゃんがあんなあからさまに沖田隊長を避けるなんて…」
「知らねーっつってんだろ。他人の色恋沙汰にむやみに首突っ込むモンじゃねえぜ」
「あ、やっぱり色恋沙汰なんだ」
「……切腹しろ山崎」
「なんで!?」



結局土方さんは何も答えてくれなかった。たぶん、土方さんも詳しくは知らないんだろうな。
確かに、むやみに干渉するのはあんまり良くないと思う。けどやっぱり心配だったりするのだ。真選組の奴らはみんな寿乃ちゃんを妹みたいに思ってるけど、俺もそれは同じだ。




「あれ、山崎さん?」
「お疲れ様、寿乃ちゃん」


隊士たちが食事を終え給仕も一段落ついた頃、厨房から寿乃ちゃんが出てきた。その表情は、やっぱり暗い。


「どうしたんですか?」
「…寿乃ちゃんこそ」
「え?」
「元気ないよね、最近」
「そんなこと…」
「沖田隊長と何かあった?」


痛いところを突かれた、というように寿乃ちゃんは表情を歪めた。やっぱり図星か。
さて、どうしよう。こっから先は結構デリケートな話になってくるだろうしなあ。やたら突っ込んだらアレだし、下手したら寿乃ちゃん傷つけちゃいそうだし。こんだけへこんでんだから単純な話じゃないだろうしな…。


「…ちょっと…いろいろあって」
「…寿乃ちゃんが言いたくないならいいけどさ、つらくなったら話してよ。俺に言いたくなければ別の誰かに言えばいいし。君のことみんな心配してるから」
「…え」
「気付かない?みんな寿乃ちゃんのこと気にかけてるんだよ。最近元気ないってみんな言ってるし、すごい心配してんの」


ずっと俯き気味だった寿乃ちゃんが、驚いた表情で顔を上げた。ああこの子ほんとに気付いてなかったのか。
俺や土方さんだけじゃない。どの隊の隊士も、もちろん近藤さんも、みんな寿乃ちゃんの異変には気付いてる。よく笑う子だから、余計に。


「みんな寿乃ちゃんのこと妹みたいに思ってるから、どうしても心配になっちゃうんだよ」
「…」
「ここにいる奴らはさ、みんな寿乃ちゃんが大事なんだ」
「…っ、ありがとうございます、山崎さん…っ」


震えるか細い声でそう言うと、寿乃ちゃんは泣き出してしまった。うんうん、つらいときは下手に我慢するより泣いちゃった方が楽なんだから。寿乃ちゃんの頭をそっと撫でると、また消え入りそうな小さな声でお礼を言われた。

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