朝と昼の境目くらいの時間に起きて、パチンコか甘味屋に入り浸るのが俺の日課。言っとくがニートじゃねェ、たまたま依頼がないだけだ。もう一度言うがニートじゃねーぞ。


「あれ、ニートの旦那」
「ニートじゃねえっつってんだろがァァァ!!!」


今日は甘味屋でだらだら糖分摂取(今日はお妙のヤローにダークマター食わされる大虐殺の日だからせめて昼くらい好きなモン食っておきたかった)していたら、見慣れた奴がこちらに近付いてきてそして第一声がこれだ。ふざけやがってコノヤローぶっ殺すぞ。


「さすがでさァ。いい大人が仕事もしねーで甘味屋居座って団子貪るたァ。あ、仕事がねーのかニートだから」
「真っ昼間から仕事サボって団子貪りに来た奴に言われたかねーよ!!つーかニートじゃねーし!!」


野郎は俺の全力の弁明をさらりと流し俺の隣に腰掛けた。店員のババアに団子を注文すると、一息ついて空を見上げる。マイペースすぎんだろ。


「今日はまたなんでサボってんだよ」
「今日は相方が寿乃なんで」
「いやサボっていい理由になってねーけど」


まあ一緒に見廻りするのが寿乃だろーが誰だろーが関係なくサボるんだけどよコイツは。なんでそんなこと知ってるかってそんなんいつもここでコイツに遭遇するからに決まってる。


「そういや寿乃最近会ってねーな。元気か?」
「元気でさァ。いろいろあってしばらくへこんでやしたが」
「ふーん…」


寿乃といやァ、最後に会った時は羨ましそうに神楽眺めてやがったっけ。…割と敏感なコイツが、そんな寿乃の目に、寿乃の気持ちに、気付いてないはずがない。おじさん伊達に長く生きてないからね、そういうのわかっちゃうんだよねさすがに。


「…どうよ寿乃」
「は?」
「そろそろ応えてやってもいいんじゃねーのって話」
「…なに言ってんのかわかりやせんねィ」
「よく言うぜこの色男。…ちょっと銀さん今から余計なこと言うよ?」


本当に余計なことかもしんねーし、お節介かもしんねーけど、悲しそうにコイツと神楽を見つめる寿乃を見るのも、おじさんは切なくなっちまうんだよ。


「…わかってんだろ?」
「…気付いてまさァ、あいつの気持ちくらい」
「じゃあ」
「けど…応えるわけにゃァいかねーでしょう」


沖田は空から視線を外さないまま、淡々と答えていく。流れる雲を見つめるその横顔からは、何も窺えない。


「隊長と部下が恋仲なんてウケがいいわきゃねェ…それに、俺ァいつ死ぬとも知れねえ身ですぜ」
「…それはあいつも一緒だろ」
「リスクが違ェんでさァ。あいつより俺の方が遥かに恨みを買ってる」
「…」
「仮に俺と寿乃が結ばれたとして、俺が目の前で誰かに殺されたりしてみなせェ。あいつ、壊れちまいやすぜ」
「…」
「…俺なんかじゃなく、普通の奴と幸せ掴んでほしいんでさァ」


団子を口に運びながら、抑揚のない声で答える沖田。こいつの言いたいことはわかる。大切だから、距離をおきたい。それはわかる、が、


「それでいいのかよ、お前は」
「…今になって、土方さんの気持ちがわかっちまうとはねィ」


一本、また一本と食し、竹串を皿に置く。こいつは、こいつの気持ちは、俺にだってわかるってのに。


「…好きなんだろ、おめーも」

「…もう行きまさァ。あんまりサボってるとまた土方のヤローにどやされる」


最後の一本を手に持って、長椅子から腰を上げた沖田。スタスタと気だるげに歩いていくその後ろ姿に、おじさんはまた切ない気持ちにさせられてしまった。…うまくいかねえもんだな。

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