「こんにちは、ミツバさん」


今日は総悟と二人でお休みをとって、ミツバさんのお墓参りに来た。ミツバさんのお墓の前に着くと、ゆっくりとしゃがんで持ってきたお花をお供えする。…いつもなんだかんだで忙しいから、こうしてちゃんと来れたのは初めてかもしれない。ごめんね、ミツバさん。


「総悟は最後に来たのいつ?」
「…納骨以来だな」
「やっぱりそうなんだ、私も」


総悟は持っていた桶を下ろし、私の隣にしゃがんだ。お線香を焚いて、手を合わせて、再び目を開ける。横を見ると総悟ももう目を開けていて、墓石に刻まれた沖田ミツバの文字を静かに見つめていた。
女手一つで大事に大事に自分を育ててくれた姉だもん、そりゃ悲しいに決まってる。
けど、へこんでるのはなにも総悟だけじゃない。親のいない私を拾ってくれて、本当の家族のように育ててくれたのはミツバさん。総悟たちが去ったあと、悲しむ私を支えてくれたのも、ミツバさん。


「…私、ミツバさんがいなかったらどうなってたんだろう」
「…なんでィ、いきなり」
「だって、ミツバさんが私を拾ってくれてなかったらそもそも生きてないかもしれないし。総悟たちが上京したあとも、ミツバさんいなかったら寂しすぎて耐えらんなかったもん」
「姉上も厄介なモン抱えちまったもんでさァ」
「厄介ってどういう意味!」


総悟たちがいなくなって、寂しかったのは私だけじゃない。大切な人に突き放されることがどれほど悲しいか、私はよくわかってる。ミツバさんにとって土方さんは特別な人だということも、土方さんもそれは同じだということも、幼かった私だって気付いてた。離れるという決断は、どれだけつらいものだったんだろう。
そんな状況下で、涙なんて一切見せずに私を育ててくれたミツバさん。私がつらいとき、優しい笑顔で私を抱きしめてくれたミツバさん。


「私、本当にミツバさんに支えられてたんだなあ」
「…そんなん俺もでさァ。いつも姉上に支えられてた」


ミツバさんは私の、総悟の、心の拠り所だった。ミツバさん亡き今、総悟の安らげる場所は、私でありたいなあなんて、思う。


「…これからは、私が支えるからね」
「は?」
「総悟がつらい時は私を頼ってほしいなって。まだまだ役不足かもしれないけど」
「…オメーと姉上は別でィ」
「そ、そんなんわかってるよ!私なんかがミツバさんみたいに総悟のこと癒せるなんて思ってないけど…」
「そういう意味じゃねーよ。寿乃は寿乃、姉上は姉上でさァ。どっちの代わりもいねえ」
「!」


総悟はさらりとそう言うと、立ち上がり桶を持ってスタスタと歩き始めた。…ミツバさんの代わりも私の代わりも、いない、んだ。
普通に考えたら当たり前のことなんだけど、それでもやっぱり、嬉しかった。


「いつまでタラタラやってんでィ。さっさと行くぞノロマ」
「ちょっと、少しくらい待ってよ!」


いつか、総悟の一番大切な人になれたらいいな。

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