一日休ませてもらい気持ちもだいぶ落ち着いた。今朝、覚悟を決めて厨房に向かえば、齊藤さんがいない代わりに田中さんが朝食を作り始めていた。聞けば総悟に齊藤さんとの給仕係交代を取り消せと命令されたんだとか。…総悟が、気を回してくれたのだ。


「…はあ」


洗濯物を干しながら、先日のことについて考える。あんなことがあるなんて思わなかったけど、よく考えたら男所帯の中に無理いって入った時点で、そういう心配もしておくべきだった、よね。私がちゃんと用心しとけば、避けようがあったかもしれないし。まあもう私をどうこうしようなんて人いないとは思うけどさ。


「…もっと気をつけよ」
「何に?」
「えっ!?わ、山崎さん!」


ぼそりと漏らすと、まさかの返事が返ってきた。驚いて振り向けばそこにはミントン持った山崎さんの姿。


「びっくりした…いたなら声かけてくださいよ」
「かけたけどね。気付かれなかったんだよねコレが」
「うそ、スイマセン…」


まあ地味だから仕方ないよ…と呟く山崎さんはなんかもう哀愁が漂っていらっしゃった。違うんです考え事してたから周りの音何も聞こえてなかったんです別に山崎さんだから聞こえなかったとかそういうわけじゃ…と言おうかと思ったけど言い訳くさいのでやめておく。


「それより寿乃ちゃんさ、齊藤となんかあったの?」
「え…」


どくん、と心臓が跳ねる。割り切ったとはいってもやっぱり、怖くないわけじゃない。それにしてもなんでいきなり、そんなこと聞くんだろう…。


「どうしてですか?」
「いやね、昨日屯所の裏で偶然見ちゃったんだけど、沖田隊長と齊藤がもめてて」
「え?」
「まあもめてたっていうより、沖田隊長が齊藤にマジギレしてるかんじだったけど。胸倉掴んでたし」
「ええっ!?」
「あんまり聞こえなかったんだけど、会話の中に寿乃ちゃんの名前聞こえたから」


総悟…何の話してたんだろう。
私のためにそこまでさせてしまって、嬉しいと同時に申し訳なくなってしまった。やっぱり私が普段からもっと気をつけてれば、総悟に迷惑かけることもなかったのに。


「…まあだいたい想像つくけど…とりあえず沖田隊長、すごい怒ってるみたいだったよ」
「…そう、ですか」


…総悟に会ったら、ちゃんとお礼言おう。それと、もう大丈夫だって言わなくちゃ。

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -