時刻は22時。近藤さんと土方さんは急遽いらっしゃった松平さんと大事なお話中で、総悟は見廻りで不在。
もう一度言う。時刻は22時。…私の、お風呂の時間だ。


「…いっか、見張りなんてついてもらわなくても」


そもそも私の入浴に誰が興味あるんだ。いくら女の人に飢えてるとはいえ、まさか私に変な気起こす人なんていないよね。言いたかないけどズンドーだし、色気の欠片もありませんしね。あダメだ言ってて悲しくなってきた。


浴場に着いて扉を閉めると、いつも通り相当な速さで脱いでお風呂場に入る。別に待たせてる人なんていないのに、いつもの癖で光速入浴してしまう。高速じゃなくて光速だからね、光の速さだからね。


「はーあ…」


もうちょっと色気のある体型してたら、総悟も女扱いしてくれたのかなあ。…いや、女扱いはされてるのかな?うーん…微妙なラインだよね。優しくはしてくれてるけど…それは幼なじみだからであって、女の子として見られてるわけではないだろうし…。


「…よくわかんないや」


総悟は、私のことどう思ってるんだろう。私と同じ気持ちでいてくれたら、すごい幸せなのになあ。
頬をぺしんと叩いて、浴槽を出る。あんまりゆっくりもしてられないし、早く上がらなくちゃ。




浴場を出て一人廊下を歩く。今日はちょっと雲が出てるなぁなんて思いながら、見え隠れする月を見上げゆっくり自室へと進んでいると、背後に人の気配を感じた。


「(?誰だろ…何か用事かな)」


そう思って振り向こうとしたその時、後ろの誰かに、口を塞がれた。


「!?んっ!」
「寿乃ちゃん…」


両手も掴まれ、壁に思い切り押し付けられる。同時に雲から月が顔を出し、辺りも誰かの顔をも明るく照らした。…齊藤さん、だ。


「んんっ!」
「寿乃ちゃん…寿乃ちゃん…」
「んんんっ、んーっ!」


微かに息の上がった齊藤さんが、私の首筋に顔を埋める。や、やだっ、気持ち悪い…っ!どうにかして逃れようとじたばたしてみるも、力でねじ伏せられてしまう。女と男じゃ、どうしたって適わない。怖い…!ただならぬ恐怖に視界が歪む。やだ…誰か!!助けて……総悟…!



「てめェ、何してやがる」


齊藤さんの首筋に、一筋の刃が沿う。齊藤さんが、一瞬にして硬直した。


「そうごっ…!」


暗がりで、ギロリと彼の瞳が光った。総悟が、来てくれた。
もう大丈夫。そう感じた。まだ齊藤さんからは解放されていないのに、安心してしまう。私の頬を伝うものが、恐怖の涙から、安堵の涙に変わった。

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