「沖田さん、好きです…っ」


買い出しに行こうと屯所の門に差し掛かった途端に聞こえてきた告白。可愛らしい高い声は私の好きな人の名前を奏で、想いを告げた。


「(どうしよう…)」


告白の声が聞こえてきた瞬間、思わず茂みに身を隠してしまった。買い出しに行くにはどうしても門を通らなくちゃいけないし、諦めて別の仕事するにしても気になって仕方ないだろうし。立ち聞きなんて良くないというのは痛いほどわかってるんだけど、でも相手が相手なだけにどうしても気になる。


「(女の子、かわいい…)」


どくん、と心臓が跳ねる。物影から覗いた相手の子は小柄で白くて、すごく可愛らしい子だった。どうしよう。総悟がオッケーしちゃったら、どうしよう…。
そもそも総悟は、どんな女の子が好きなのかな。…少なくとも私より、あの子の方が総悟とお似合いなんだろうな。

総悟が付き合っちゃったら、私、どうすればいいんだろう。

どくん、どくん、やたらうるさく鳴る心臓。総悟、なんて返事するのかな。どうしよう、私、


「あー…すいやせん。気持ちだけもらっときまさァ」
「…そう、ですか」


総悟の返事を聞いた途端、安心してしまう自分がいた。


「お時間とらせてしまってごめんなさい。それじゃ」


女の子は泣かないように努めて言うと、小走りで去って行った。けど、声が震えていて、明らかに涙を堪えている様子だった。やっぱり、ショックだよね。ホッとしてしまったことに罪悪感を覚える。


「……いつまでそうしてやがんでィ」
「え」


気付くと総悟の目線はこちらに向いていた。しゃがみ込む私を呆れたように見下ろす。えっと…もしかして最初からバレてたかんじ?


「盗み聞きたァ随分な趣味してやがんな」
「ご、ごめ…」


慌てて謝ると総悟は小さくため息をついた。え、どうしよう本気で呆れられた!?


「謝るくれーなら引き返しゃよかっただろうが」
「……その、総悟が…なんて返事するのか、気になっちゃって……ごめんなさい」
「…別に怒っちゃいねーよ。もういいから仕事に戻れ」


…ほんとかなあ?とりあえず総悟の言う通り仕事に戻るため立ち上がる。そうだよ、早いとこ買い出し行かなくちゃ。お昼ご飯の準備間に合わなくなっちゃう。小走りで門をくぐり、目当てのお店へと足を向ける。


「……俺ァいくら外見が良くても、よく知りもしねぇ女とは付き合ったりしやせんぜ」
「!」


勢い良く振り向くと、屯所に入っていく総悟の背中があった。……やっぱり総悟は、見た目で選ぶような人じゃないよね。

総悟の後ろ姿にこっそり笑いかけ、再び小走りで店に向かった。

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