キミと別れるまであと4日


世界なんてそう簡単には変わらないのに、あなたは私の世界を簡単に変えてしまった。



「よう!」


『…今日も来たんだ、飽きないねー』


「当たり前だろうが」


約束したんだからよ、って笑いながら私の横にあるペットボトルに一輪のシオンの花がいけられた。



『…今日で六本目だね、シオンの花』


「…ったく、簡単に言うなよなー!シオンの花ってなかなか売ってないんだぜ?」


『知ってるよー。だから頼んだんだもん』



置かれたシオンの花を眺めながらそっと花に触れてみても、実際に触れる事は出来ない。


透けてる自分の手のひらから目を背けて、一護に目を向けると彼は視線に気がついて私の方を見た。



「…ん?なんだ?」


『…一護が突然ここにきてから、もうすぐ一ヶ月になるんだね』


「まぁなー。あの時のお前の驚き方、忘れられねぇぐらいの顔だったな!」


『…うるさいなー!いつも誰も見向きもしないのに、突然声かけられてビックリするの当然でしょうが!』


ちらりと横目で睨んでると一護はいつもみたいに笑ってて、こっちまで不意に笑顔になってしまう。


一護は私と出会ってから私に笑顔をくれる。
屈託のない笑顔が、枯れた私の心をみたしてくれた。

成仏出来なくて、行く当てもなくてただただ毎日なんとなく彷徨ってた私に、居場所をくれたのは一護。

居場所と笑顔をもらってるのに、
それだけでもすごく嬉しい事なのに、

…今はそれじゃ足りなくて。

もっと、ずっと、一護と居たいと思ってしまう自分が嫌になる。

もっと早くに出会えてたら、なんて思ってる自分に目眩がする。



「…どうした?」


『ん?…いやぁ、別に』


「なんだよそれ」


わけわかんねぇ、ってまた笑う一護から目をそらして、またシオンの花にそっと目をやる。


…私が好きな花はちゃんとここにある。だけど私はここに居ないんだ。
もう、この世界にはいられないんだ。



「なぁ」


『…どうしたの?』


横に座った一護に目を向けると、彼は一輪シオンの花を手に取った。




「この花、お前に聞くまで知らなかったんだけどよ。
なんか、綺麗だな」


『でしょ。…ずっと前からシオンの花が好きだったの』


「なんか、分かる気がする」


小さく匂いを嗅いでまたそっと花を眺める一護に手を伸ばしてみると、その手のひらには触れる事が出来た。


ゆっくり私の顔を見て、そっと私の鼻先に花を寄せてくれた一護。

そして大きく息を吸い込むと、優しくて懐かしい香りがした。


『…ほんとに、いい香り』


「…だな」


『ねぇ、一護。
…明日もシオンの花持って来てくれる?』


明日もあなたに会いたくて言ってる事なんて気づかれたくなくてぽつりと呟くズルい私に、一護はまたいつもみたいに笑った。


「あぁ、当たり前だろ」


『…ありがと』


もう少しだけだから。

あと少しだから、
あなたのその笑顔を糧に明日を過ごさせてください。

なんて思いながら眺める一護の背中には、もう手は届かなかった。




キミと別れるまであと4日
(…そろそろ、お別れだね)


曰はく、さまに提出。

素敵なお題、ありがとうございました!


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