その気持ちが恋

『檜佐木ー』


「何すか?って言うより、たいやきこぼさないでくださいよ?」


『分かってるよ、っていうかこれ書類』


たいやきを持ってるのと反対の手で書類を渡すと、檜佐木は笑いながらそれを受け取ってサインをしてくれた。



「六番隊は忙しいですか?」


『まぁ三席だから檜佐木よりはましかな』



そう言ってサインしてくれた書類を確認していると、急に檜佐木の掌がすっと私の顔に伸びてきた。


『ん?どした?』


「目の下、隈出来てますよ」


さらりと目元を撫でる檜佐木の掌が暖かくて、私はくすりと小さく笑った。


「俺、変な事言いました?」


『いやいや、そんな事ないから大丈夫だよ』


「…無理、しないでくださいね」


真っ直ぐに私の目を見て言う檜佐木の言葉が、じんわりと暖かく私の胸に広がった。



『檜佐木は心配性だねー、大丈夫だよ』


「いつもあなたが無理するからでしょ」


『頑張れる時には頑張らないとね』



私がまた小さく笑うと、檜佐木は困ったように笑った。



「まぁ頑張ってるあなたが好きなんですけど」



どこか照れ臭そうな檜佐木の前にまだあった新しいたいやきを袋ごと置いて、私は立ち上がった。



『私も檜佐木のそういうとこ、好きだよ…あんたも無理しないようにね』


「あの…!」


『ん?』


後ろから呼び止められて振り向くと、赤い顔をした檜佐木がこっちを見ていた。



「今日、仕事終わったら迎えに行って良いですか…?」


その問に私は笑顔で頷いた。


『執務室で待ってるよ』


それだけ言って部屋を出た。


あぁーあと半日。
早く時間が経たないかなぁ。






その気持ちが恋





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