それだけで幸せだから

『恋次ー!』

ぶんぶんと手を降る名前に軽く手を上げると、名前はにっこり笑ってこっちに向かって走って来た。


「おい!そんな急ぐと....」
『うわぁっ!』

「あー。やっぱりコケると思ったぜ」


目の前で転んだ名前に急いで近づいて手を差しだすと、ゆっくり顔を上げた彼女はまたにっこり笑っていた。


『ゴメンね。ありがとう』

「大丈夫か?ったく、ほんとドジだよな。別に俺はどこにもいかねぇんだから走る必要ねぇだろうが」


そういいながら立たせてやると、名前は膝についた砂を払いながら笑った。


『だって、少しでも早く恋次に会いたかったんだもん』


「お前....恥ずかしい事普通に言うなよ!」


『えー?別に恥ずかしくないよ?
ほんとの事だもん』


恥ずかしげもなくふわりと笑って言う彼女の顔を見ているとこっちが恥ずかしくなってきやがった。


「あー...ほんとお前には敵わねぇな」


『ふふっ、恋次に敵うとこなんてそんなとこしかないからね』

「どう言う意味だ?」


俺が聞くと、名前は転んだ時に落とした紙袋を拾ってから笑った。


『私の方が恋次を好きだって事』

「なっ!」


『はい!これ、私から愛を込めてたい焼き』


「あぁ...サンキュー」


勢いに押されてまだ暖かいたい焼きを受け取ると、名前は嬉しそうに笑った。


『じゃあ、私これ渡しにきただけだから』


くるりと背中を向ける名前の腕を何も言わずに俺は掴んだ。


『恋次?』

不思議そうな名前の耳元に唇を近づけた。


「...俺の方がお前が好きだぜ」


それだけ言って軽く抱き寄せると、名前はまたにっこりと笑って俺を抱きしめ返してくれた。





それだけで幸せだから!










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