誰よりも君が
俺が好きだと伝えたら、君はどんな顔をするんだろうな…
―…
『失礼いたします。檜佐木副隊長…こ、ここにサインをください…』
書類を作成していると、前から小さくて焦ったような声が聞こえた。
「…誰だ?」
分からないフリをして言ったが、ほんとは小さくても凛としていて、それでいて優しいこの声を俺は1日待ち続けている。
『あ…す、すいません!…六番隊三席名字名前です…』
少し俯いてこっちをみる名字に意味が分からなくて首を傾げた。
なんでそんなに悲しい顔してんだよ。
俺なんかしたか?
黙り込んだ俺に名字はガバッと頭を下げた。
『す、すいません…私の名前なんて知らなくて当然ですよね…なのに調子にのってすいませんでした』
「いや…そんな事気にしてねぇから」
『…ほんとすいません、ここにサインをいただけますか?』
頭を何度も下げる名字の顔は相変わらず泣きそうだ。
俺ほんとに嫌われてるんだろうな…
大体、名字に笑いかけられたコト何てねぇよな。
そう思うとつきん、と痛む胸に俺は溜め息をついた。
『…檜佐木副隊長は、そんな私の事が…嫌いですか…?』
「…は?」
俺は名字の言葉に顔を書類から上げると、泣きそうな名字の顔が視界に入った。
「名字?」
『ぁ!…いや、その…!すいませんでした!』
「あ、おい!」
みるみるうちに名字は顔を真っ赤にして部屋を慌てて出て行ってしまった。
「何だったんだ…?」
つーか、あいつ俺に嫌われてると思ってるのか?
おいおい…それじゃあダメたろうが。
「とにかく…追いかけるか」
あんなに泣きそうな顔で出て行かれたら心配だ。
俺は慌てて名字の霊圧を追った。
『はぁ…やっぱりダメだなぁ…』
六番隊の近くの大きな木の下で、小さく呟いてうなだれている名字を見つけた。
『私って、檜佐木副隊長に嫌われてるのかな…』
「何でそう思うんだよ!」
『ひ、檜佐、木…副隊長…?』
目を真っ赤にしてみれば驚いた顔で俺を見る名字。
また泣いてるじゃねぇか…
俺はゆっくり名字の頬に触れた。
「…お前、そんなに俺が嫌いかよ」
『…へ?』
「…何で俺の前じゃ笑ってくれねぇんだよ!」
俺の声にビクッと体を強ばらせる名字。
「…悪い」
『檜佐木副隊長…?』
名字の顔を見ると、名字は顔を真っ赤にして言った。
『…何か、勘違い…してませんか?』
「勘違い?」
『わた、し…檜佐木副隊長が、嫌いなんかじゃないです…!!』
目に涙をいっぱい溜めて言う名字に俺は思わず固まった。
『むしろ…わたしは…!』
言いかけた名字を俺はキツく抱きしめた。
『副、隊長…?』
「好きだ」
『えっ…?』
「だから!…好きだって言ってだろ!!…返事は?」
『あ、私もで…っ!』
軽く唇を合わせて頭を撫でると、名字は更に真っ赤になった。
「笑った顔も好きだけど、照れてる顔も好きだな」
『ちょっ!…恥ずかしいですっ』
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