僕と迷子と敵

今俺は希有に頼まれて夕露を探しに歩いていた。
まだわからないだろうから近く軽く見てくるだけでいいよ。と言っていた希有。あるいみチャンスだと思って適当に歩き回っている。

…が、


「…oh…どこだここ」


やはりというべきか、わけのわからねぇ道に出ちまっていた。


「Shit!適当に歩きすぎたか…」


気配を探ってみるが人らしい気配はない。
いや、あったとしても名称を知らないから聞いても意味がない。


「Ahー…大体なんでShoolとやらからHoomまでいつも行ったりきたりしてるのに迷子になんだ?ありゃあ…1人にさせねぇほうがいいんじゃねぇか?」

「ふむ。それは確かに大いに賛成だ。隣町までの御遣いへも行けぬほどの人間だったとは驚きだ。だがそれもまた未来(ここ)と過去(私達)の差というべきか。時間が違うだけでこうも人間は腑抜けへと成り下がれるのか。平和な世では仕方ないというものなのか…。」

「!?」


わけのわからねぇ理論的なんだかなんだかを適当にならべた声が聞こえたほうへ勢いよく振り向く。チッ、こんな近くに人がいたのにも気づけなかったのか俺は…!

反射的に近くにあった鉄パイプを握り、ばっと振り向いた先には、


「…! 夕露?!」

「いかにも私は夕雨夕露だが…ふうむ、そうか。そうゆうことか。私も腕が鈍ったということか。それとも、やはり全てが同じなのか…。
さて、竜と呼ばれている男よ。貴様はなぜここにいるのか、そしてなぜ私の名を知っているのか。全て教えてもらおうか。」


どこからともなく苦無を取り出した夕露――もとい、俺等の世界の夕露。
確かに俺はあいつの名前は知らねぇ。というか今知った。最初は夕露だと思ったんだが…違うみてぇだな。


「そっちこそ…なんでここにいんのか、全部白状してもらうぜ…!」

「ふむ…やっぱり貴様のほうが面白い…!」


はじめて夕露はこの世界で表情を変えたことを、俺は知らなかったし
夕露も気づいていなかった。



僕と迷子と敵
(今まさに激突する寸前に)
(こちらの世界の政宗と夕露が滑り込んでくるのは)
(数秒後の話――)