で、まぁ梨を食べながら話そうということになったのに梨争奪戦になってしまったのはもうこのさい諦めることとする。あいつがうちのを奪おうとしたのが悪いんだ。
最終的に母ちゃんの雷が落ちて仕切りなおしになった。
「………つまりタイムスリップとみた」
「伊達政宗という歴史の人物はいないけどな」
「じゃああれじゃね?平行世界的な」
「なにそれ」
「世界はもしもの数だけ存在するのさ。もしもあのときああしてればこうしてればって思うとき誰しも一度はあるっしょ?つまり、もしも戦のない世界で生きていたら。という世界がここなわけ」
「パラレルワールドか」
「まぁ、うちは伊達政宗という友達もいなければ学校でそんな人がいたという話も聞かないんだけどね。残念なことに。」
もともと交流関係が広くないのも拍車をかけているのか、記憶を探っても伊達政宗という名前の人は記憶内では見つからなかった。今度噂好きの朝陽にでも聞いてみよう。もしかしたら知っているかもしれない。
「なにか質問があるならどうぞ。」
「Ah…your name?」
「夕雨夕露。ちなみにそっちのが兄であっちのが母ね。父は寝てる。」
「希有っす。」
「夢よ。」
「………お前の知り合いに、石田ってやつぁいるか?」
「……いない、かな。ありふれた苗字だからもしかしたら今まで知り合ってきた中の人でいるかもしれないけどさすがにもう覚えてないよ」
「…そうか、なら違ぇかもな」
急に黙り込んだ伊達政宗。一体何を考えているのやら。まぁどうでもいいんだけどさ。
残念なことにエスパーでもなんでもないから心を読むなんてことできない。まぁ当たり前だよね。できれば楽なんだけどさ。そういうと大抵の人は読めない方がいいっていう。知らないことを知らないままでいた方がいいという。人が信じられなくなると。ただ僕は言いたい。全てを知った上で人を信じたいと。気味悪がられるとか言われるけど、別に隠せばいいじゃないか。人間不信になってでもいいから、一度でいいから人の考えていることがわかるようになってみたいと思う。そうすれば、臆病な自分の心も、保てる気がした。
「…とりあえず、ここに住む方向でいいのかな?お母さんよ」
「いいんじゃない?あんたらどっちかの部屋で一緒に寝なさいよ」
「母さん、俺ベッドだから無理だよ」
「いやいやうちもベッドだからな。まぁいいんだけど。うちソファで寝てもいいわけだし。」
「寝床は後で相談しなさい。政宗君。でかけるわよ。」
「Ha!?」
「日用品だけならまだしも服はよくサイズわからないから一緒にきてね。希有、服と靴適当にかしてやりなさい。」
「いえっさー」
「ちなみに母ちゃんや、我等はお留守番かね?」
「ついてきてどうすんのよ」
「それもそうだ」
その後適当に兄の服を着た伊達政宗少年と母上が出かけて、結構な量の荷物で帰ってくるのはもう少し後のはなし。
私と戦国男と事態
(ベッド勝手に使って。あと朝は煩くしないで。)
(…なぁ、本当に俺この部屋で寝ないとだめか?)
(別に嫌なら兄貴のところ行けばいいよ。どかした?)
((女の部屋とか緊張して寝れねーとか言えねー…))