俺様は、戦で死んだ。わけじゃない。
寿命で死んだのだ。
あの時代で、寿命で死ねるだなんて凄くいいことだと思う。
1回死んで、また生きて。今度こそ死ぬと思った、思ってた。
「……で、なーんでまぁ、3歳で俺様また存在してるんだろ、」
死ぬのがわかってた。だから姿を消し山へ篭り、独りで死んだ。独りで死にたかった、というよりは独りで死ぬしか選択がなかった。真田の旦那もお館様も死んだからには、独りで死ぬしかなかった。
…といえればいいのだが、俺様はあの2人が死んだ後もなあなあと生き延びていたのだ。
西軍大将である石田三成が死んだところで俺様達の死亡は決定していたが、俺様は忍。いくらでも死んだふりができる忍。
成り代わってやったさ、東軍大将である権現の忍に。
「今思えばよく権現さんも知っておきながら俺様を受け入れたこと…殺し合いになるだろうと思ってたのに見事に予想外してくれちゃってさ、本当狸だったなぁ」
暗殺されるとか考えなかったのだろうか?それとも俺様をそこまでなめていたのか、まぁ今となっては知れないのだけれども。
とりあえずまぁ、権現様が死ぬまで俺様はずっと権現様の影をやってやったわけだ。年齢的に言えば俺様が死ぬのが先だろうに、どうやら権現様はせっかちだったようでさっさと死んでいった。殺された。
それから俺様以外みんな、みーんな死んでいって、最後に残った俺様もやっと死んで、死後の世界とやらにいけるはずだったのだ、が…。
「夕露、なにしてるの?」
「ん?んーん。何も?それより臨也、絵本読まない?」
「よむ」
「よし、じゃあ何がいいか選んでねー」
「うん」
結構ある絵本の中から臨也に選ばせる。
まぁ、なんとなく名前で察せるようにどうやら俺様今度はデュラララの世界の折原臨也の双子の兄へと転生したようだ。そうそう、あのうざいで有名な折原臨也。
正直俺様子供苦手…というか嫌いなんだけど、こうゆう大人しいのや大人っぽいのは好きだなぁ。面白いしね。
絵本を選んだらしい臨也がこっちに視線をよこすのを確認し、こいこいと手で招く。
絵本を持ったまま俺様の隣に来れば完成だ。
いつもの日常の、一部。
素直に俺様の隣で絵本を広げてる臨也は、これから先あんな大人になるだなんて想像もできないくらいに普通だ。なにがどうしてああなったのだろうか。まぁ、でもそうなる兆しはこれからいくらでもあるに違いない。というかないと困る。面白みにかけてしまう。それだけは、簡便だ。
「…?よまないの?」
「ん、あーごめん。この字なんだっけって今頑張って思い出してた」
「ふーん。で、なに?」
「あーこれは…ってちょっと待って、なんでこれカナ振ってないのさ。というかまず質問だけど臨也はどうしてこれを絵本だと思ったの」
「え?えほんじゃないの?」
「よく見て、絵が全く描いてないからこれ!これ小説!もうお兄ちゃんびっくりだよ!」
「夕露それよめないの?」
「3歳児は読めないって普通…」
「えー」
ぶーと言わんばかりに口を尖らせている臨也に、かながふってあるのにしなさいと言い小説を持たせる。いやまぁ実際は読めるんだが徹底することにしたのだ。将来的な意味で考えて、あまり天才的だと面倒くさい。
それと一つ言うなら正直な話、あまり完璧とはいえないのだ。何十年みみずみたいな文字見てきたと思ってる。カルチャーショックが大きいんだ。少しはおにいちゃんを労わっておくれ。
これから始まる酷くつまらなくくだらない生活に、溜息が漏れた。
お気楽な悪夢
(…はぁ、修行でもしようかな)
(顔とか臨也と全く一緒だし)
(これからのためにも、そして俺自身のためにも…よしそうしよう)