「…どこだここ」
鍵を使って扉を開けてみれば、わぁ別次元!って馬鹿かァ!
1人ノリツッコミもそこそこに、適当に歩きだす。宛てなんぞない。あるのは夕雨は絶対ここにいるという確信だけだ。
「…に、しても本当どこなんだ?ここ、」
「ここはエクソシストになるための塾ですよ」
「へー、魔法使いの学校みてーだな。
って誰だし」
「Cuteなわんこさんです」
「犬は普通喋んねーよ、お前さん一体誰だ?人じゃねぇみてーだけど」
「! …やはり貴方には隠し通せませんねぇ…」
「霊にしちゃ存在がある、憑依と同じっぽいが…気配はあの黒いちびっこいやつに似てんな」
「ほう?そこまでわかりますか、で?貴方は私をどうします?」
犬の癖してなんか今ドヤ顔みたいなのしたぞ、効果音つけんならキラーンって感じだな。あの人を試すようなキラーンな。何の話してんだ俺。
どーもしねーよ、とだけ返事を返し、犬から視線を外す。だってどうしようもねーし、逃げるしか俺できねーし。
なんとなく、傷痕がチリッと痛みを持った気がした。
「さて、どーすっかなー…犬、お前夕雨がどこいっかしんねぇ?」
「知ってますよ。大体私は君をそこへ連れて行くために来たんです、ついてきてください」
「…へーいっと。」
犬に道案内してもらうとかなんかシュール、と思いつつ犬の後を追っかける。
犬はのそのそと歩き、そして一つの部屋の前で止まった
「ここか?」
「はい、早く入らないと先生が来てしまいますよ?」
「なに?管理人さん?見回り?」
「先生は先生です」
「…まぁどうでもいいや、寝たい」
さっさと夕雨連れ帰って寝よう。そう意気込んで扉を思いっきり足で開ける。ちなみに両手はパーカーのポケットである。
扉の先には、夕雨以外にも思いのほか人がいた。
そして教室は酷くボロかった。
「………、夕雨。」
「あ、夕露じゃん。着替えたの?」
「どうでもいい、帰るぞ」
「えー…これから塾だよ?」
「は?なんの。」
「祓魔師になるための塾ですよ、神崎さん。」
「?!」
急に第三者の声が聞こえてきたと思ったら、眼鏡をかけたどっかで見たような気がするやつがそこに立っていた。本当どこで見たんだっけか。第一祓魔師ってなに?夕雨にアイコンタクトで問いかけてみるが、こいつもどうやら知らないらしい。なんで知らないのに受ける気になったんだ。つーかえくそしすととかどこの漫画だ。AKUMAと戦えばいいのか、殺人兵器と戦ってどっちが神か証明すればいいのか?ん?
いろいろどうしていいかわからないでいると、眼鏡男はにっこり笑って席についてくださいと言ってきた。とりあえず一番後ろの端っこに座っておいた。夕雨に誘われたが教壇のまん前だったんで断った。
「はじめまして、対悪魔薬学を教える奥村雪男です」
あの眼鏡男が教壇の前で自己紹介をする。
見た感じ同年代っぽいが、どうやら飛び級とかそんな感じの天才で先生なようだ。あれ、日本に飛び級ってあったっけか?
「お察しのとおり僕は皆さんと同い年の新任講師です。…ですが悪魔祓いに関しては僕が二年先輩ですから塾では便宜上、先生と呼んでくださいね」
…どうやら本当にエクソシストとやらをここは目指す塾なようだ。ただのサークルかなんかだと思ったんだが違うらしい。なんだろう、酷く面倒な感じしかしやがらねぇ。
しかもさっきからこの部屋、酷く臭ぇし。
「まず、まだ魔障にかかった事のない人はどの位いますか?手を上げて」
魔障ってなんだ。こんなことなら夕雨連れてさっさと出ていきゃよかった。つか夕雨の近く座ればよかった。相談ができん。
俺がいろいろ考えてる間にも授業は進む。人数の少ないこのクラス内で3人手を上げていた。ちなみに夕雨は全くわかっていない様子。だからあんとき帰ってりゃよかったんだ。
「3人ですね、他にはいませんか?」
お願いだからまず魔障というのを教えてくれないだろうか、俺のキャパがもう限界寸前なんだが。誰か俺にもわかるよう説明してくれ。いや、しなくていい。しなくていいから俺をここから助け出してくれ、帰らせてくれ。
眼鏡男が勝手に俺と夕雨も魔障を受けてないと判断し、授業と言う名の儀式とやらの説明をしている中、俺は不貞寝に専念することにした
もう嫌だ。
(それから黒髪の奴が眼鏡ともめて、血の入ったやつ落としたりして)
(なんか変な動物でてきて、それが悪魔らしくて)
(とりあえず俺はなんとなく理解して、夕雨を連れて混乱に紛れてその日は帰った)
(もう二度と、関わりたくない)