「…で、どーゆうことよ。主人公ちゃん」


はーい皆さんこんにちは。夕露です。今佐助君に超真っ黒い笑顔で問い詰められてます。いやいや佐助さん、私今結構危ない状況なんでそんな悠長に話せないんですよね。…あ、でもむしろ全部話してこいつら巻き込んじゃえばよくね?私だけ巻き込まれるのとか癪すぎるから完璧じゃね?え?皆のため思ってここは引くだろ普通って?私が巻き込まれて大変な思いしてんのにこいつらだけ普通に暮らすとかなにそれ有り得ない。むかつく。だから私はこいつらを思いっきり巻き込むことにした。


「えーとかくかくしかじかなんだよね」

「まるまるうまうま。そうゆうことね。なーんだ俺様心配しちゃった☆…ってそんなわけあるかーッ!」

「ギャー!フライパンはやめてぇ!てかそれ今どこから出したオカン!」

「なに?なんなの?マフィアに攫われて表世界で死んだことにされて虹の守護者に選ばれた?ばかじゃないの?なにこれゲーム?ゲームしてたのあんた?死ぬの?」

「全部本当だって!できれば信じたくないよこんなの!誘拐されたと思ったら問答無用に試験うけさせられてあまつさえ表世界で死亡?いやいやふざけんなよ!」


うがあああと双方叫びながら会話をしていたら、後ろからなにやら飛んでくるのがわかったので右に避ける。佐助は気づいてたようでとっくに避けていた。…んん?今のは…球かな。拳銃の。

理解すると同時に振り向く。うわぁどうすんだよお前のせいだよ佐助、お前と騒いでたから囲まれちゃったじゃん。何人もいる黒づくめ(某子供探偵思い出すよね)を睨みつけながら、佐助を庇っておく。佐助もただならぬ雰囲気に気づいているのか無意識に相手を睨みつけて殺気をだしていた。…ま、殺気だすのもわかるわ。

とある何人かの男が拳銃を片手に持ち、頭に押し付けている。
つまりは人質だ。佐助と漫才しているうちにひっそりとやられたらしい。私達の近くには幸村がいた。けれど、今その幸村の頭に突きつけられているのは拳銃…佐助、まだきれるなよ。お前何も思い出せてないんだから。本能のまま、動かないでくれよお願いだから。


「…何の様だよ、」

「逃走者発見しました。数名の子供達と一緒です。」

「おい聞いてんのか人の話。無視かおい。」

「…はい。はい。…了解。」

「スルーか?スルーなのかこのハゲ。」

「おい譲ちゃん、状況わかんねぇのか?…んな言葉次使ってみろ、こいつらの頭ぶち抜くぞ」


ガチャっと、見せ付けるように拳銃を政宗の頭につきつけている。…ちなみに片倉もつきつけられている。やっぱ片倉さんに限っては放置しなかったようだ。まぁ、放置されていたら今頃本能のまま行動起こしてるだろうからそっちの方がありがたいんだけどさ。

つーか、まぁ予想はできるけどこりゃついてこないとこいつら殺すぜ?って展開か…あぁでも私さっき巻き込むためにいろいろ暴露っちゃったから皆殺しは避けられないよねー。…うん。ならもう。しょうがないか。


「…佐助」

「なぁに夕露ちゃん」

「“虎の影”“蒼天疾駆”」

「…夕露ちゃん?」

「“真田忍隊長”“戦忍”」

「ちょ、今へんなこと言ってる場合じゃあ――」

「“真田源二郎幸村”“武田信玄”
 “猿飛佐助”」

「っ――――?!」


瞳がぶれる。あぁ、記憶が舞い戻ったようだ。あれ痛いんだよなぁ。3日くらい頭痛酷いんだよなぁ。でも、しょうがないよね。緊急事態だから。

頭を抑える佐助に目もくれず、気配だけで状況を探る。
あぁあぁあぁ、ちくしょう。

たのしいなぁ…!

顔には出さないように、だが少し口角が上がるのがわかった。ああ楽しい。楽しくてしかたがない。佐助は思い出したし、じゃあ次はどうしようか。でもまぁそろそろ『大将』がキレるころだからなぁ…。

背後の気が一応は定まったのがわかった。頭痛酷いだろうけど、頭痛ぐらいじゃお前は弱らないだろ?
明らかに雰囲気が変わった佐助に気づくこと無い黒スーツ共。下っ端か。なんだ、つまんねーの。

とりあえず佐助に声だけ向けておく。


「どーだ猿飛佐助、気分は」

「最ッ悪だね。超最低な気分だ。ちくしょう楽しかったのになぁ、何も知らない無知で滑稽な俺様は、凄く、楽しかったのに…」

「ははっ…私はその状態のあんたが羨ましかったね。でも戻ったならもういいや。きっと一緒だろうから」

「アハー、夕露ってば、性格悪ーい…」

「今更。さて佐助、どうするこの状況?」

「うーんそうだねぇ…俺様武器もなにもないしなぁ…どうする?」

「私の提案は2つだ。1つはどうにか私達がする。もう1つは…全てを思い出させる」

「…それ後半のしかできないじゃん。あーもうできれば思い出してほしくないのになぁ」

「私もそれは同じだ。けどまぁ、私だけ覚えてるのもむかつく。全部思い出させるぞ」

「そりゃ俺様も同意だね。じゃあ、どうすればいい?」

「キーワードを関わりが深い者が言えば記憶が繋がる。嫌でもな。」

「りょーかい♪」


小声で話していたから生憎は聞こえてない。さて、幸村は佐助に任せるとして…大将と刑部は大丈夫だから、私は…元就からいくか。

拳銃を向けられている元親の近くにいる元就に視線を向ける。元就は気づいたらしくこっちを向いてくれたので口パクで1つ。通じないだろって?いやぁ、結構通じるんだなこれがw

キーワードをいくつか言ううちに瞳がぶれて、そして雰囲気が前に戻る。あーあ。丸い性格の元就可愛かったのになぁ。続けて元就に元親を戻せと伝える。あ、幸村の方も思い出したようだ。口パクでどんどん繋げていけば、はい完成。


全員戻りましたとさ。畜生。


「…何をぼそぼそ言ってるのかしらねーけどこっちには人質がいんの忘れんなよ?ガキ」

「はっはーん?それがどーしたよ。悪いけど勝手にいろいろ決められちゃうと困るんだよね、てか迷惑。人が自分の思い通り回ってくれると思ったら馬鹿だろっつっとけあの重力無視した髪型の野朗に」

「なっ…貴様、状況がわかっているのか!」

「ここで理解してなかったらただの馬鹿じゃないのー?てゆーかさ、どーせ殺す気なんでしょお兄さん達?さっさと殺せば?まぁ、殺せたらの話だけどね♪」

「クソッ…オトナをなめんなよ糞餓鬼ぃいい!」

「コドモをなめんなよ、糞野朗」


あっかんべーをして左手の薬指を立てる。よい子はまねしちゃだめだよ。
まぁあのオトナさんは簡単に挑発にのるようで、ばぁんと煩い音がする。おいおいここ住宅街だぜ?音くらい消せよ。今の時代ならそーゆーのあんだろ?

まぁ、そんなのは無駄なのだが。

ばぁんと音をさせたのは幸村の頭につきつけられていた拳銃。まぁ戻った幸村に限ってそんなもんで死ぬわけがないのだけれど。

撃った瞬間拳銃の方向を変えたらしい。撃った男が地面に倒れた。あーあ。死んだか。馬鹿な奴。
冷めた目で見る。周りの男は焦り戸惑う。殺し屋ならもっとまじめに殺し屋やれよな。まぁ、戦争なんて殆ど行ったことないんだろうけど。今の時代は、ぬるすぎる。本当に。


「幸村ー、無事か?」

「心配は無用でござる。強いて言うなら少々頭が痛むぐらいで何もありはせぬ夕露殿」

「アハー旦那、それだけじゃないっしょ?」

「…うむ。少し、ぬるま湯に浸りすぎた。…血が煩わしい」

「お、おいてめぇら!何悠長に話してやがっ…」


戻った幸村と喋っていると、とある男が叫ぶ。…まぁもう絶命したが。

視線を向ければ竹刀で撲殺したのであろう大将の姿。そしてよく見れば刑部とKG…ミス。慶次も男を倒していた。


「夕露、何をのろのろやっている」

「結局全員思い出しちゃったのかー、こりゃまた楽しくなるねぇ!」

「ヒッヒ、うるさくなるの間違いじゃないか風来坊?」

「Ha!そりゃ違いねぇ…ぬるま湯に浸かり過ぎたせいで昔みてぇに動けねぇが…上等じゃねぇか。どーせすぐに戻れんだろからよ」

「政宗様、なれば今どうすべきかわかっておりますね?」

「ったりめぇだ!…小十郎、てめぇは…言うまでもねーな」

「て、てめぇら!しでかしてくれやがって…ほ、本当にぶっ殺すぞ!」


おびえながら叫ぶ男に政宗は視線さえも向けない。まぁ、部下でもない格下相手にしてらんないってやつだ。大体にまぁ殺される勇気もない人が、そんなもん持っちゃだめだろうに。

生まれてから死ぬまで、死が隣にあった生活してたやつを殺そうとか、まぁ普通に無理な話だったわけですよ。


ばたり。
鈍い音とともに人が倒れる。

まぁまだ少し残ってるけど、それはあいつらを抑えてなかった人間だけでありまして。


「あー久々すぎて力加減わかんねぇなこりゃ…」

「そんなもの必要などない。我の邪魔立てをする者は万死に値する!」

「うっひゃー、拳痛いなこりゃ…久々に骨のつぶれる感触だ。」


三者三様、だがその顔には笑顔がともっている。
狂ってるって?いや、そんな今更なこと言われてもねぇ…?

もはや生者のいないこの場所で、久々に再開した面々へ笑顔を向けた。


「やぁ、おはよう皆。久々の殺しはどうだった?」

「武器がほしくなりまするな」

「つーかなんで今まで忘れてたんだぁ?かと思ったらすぐ思い出すしよ、」

「三成、まさかお前ずっと覚えていたのか?」

「当たり前だ。貴様とは違う。」

「ヒッヒ、我らはみな覚えていたまでよ。…まぁ正確に言えば幼少の頃に思い出したのだがな」

「風来坊、てめーはなんで覚えてたんだ?」

「あ、ほら俺秀吉と友達じゃん?」

「OKもうわかった。」


はぁ、と溜息をついたり早速喧嘩しだしたり、まぁ明らかに血まみれな死体があるところで話すようなテンションじゃないよな、と思いはせどそれは時代のせいでおかしく見えるだけで、
昔はもっと酷い血と硝煙の臭いしかしない場所で、それこそ歩くと足に肉片がつくような場所で生き合っていたのだからこんなもんどうでもいいレベルなのだが。

さてと、全員がおはようして懐かしむのはわかるけども、ずっとここにいるわけにもいかないから移動しなくちゃあなぁ。


「こんな深夜にサイレンサー付きの拳銃使わなかったから人の気配が近づいてきたねぇ………私の家、は、無理だから…」

「それなら俺の家に来い、ここから近ぇし広ぇ」

「人目につかないように、っていっても…街頭ばっかで無理か…」

「婆裟羅も使えねぇ上に皆殺しって手も使えねぇとなりゃあ…あんまり血被ってない奴らで血まみれの奴囲って移動するしかねぇなぁ」

「そうだねぇ、真田の旦那はモロ被ってるから必然的に内側で……」

「その計画をたてている時間が無駄だ、早急に移動するぞ。もう人が来る」


元就の言うように明らかに迫っている気配を感じつつ、人気の無い方を遠回りして帰ることとした。遠回り、といってもそんなに凄い遠回りでもなかったが。むしろいつも近道を探していてその道を使ったりしていたから