大きな大きな扉。その向こうに大将がいるらしい。一発ぶん殴るぐらいはしたいけど、そうなると銃で撃たれて終わりそうだからやめておく。用件が全て済んでから、殴ろうと思う。
ギィッと重そうな音を立てて開く扉。
その向こうには、5人の人間がいた。
「10代目、連れてきました」
「あぁ、うん。ご苦労様。」
にっこりと微笑む、椅子に座っている彼。他が全員立っているところからして彼が大将なのは間違いないだろう。
(…でも、まぁ……)
なんて酷い笑顔なんだか、作り笑顔するならもっとちゃんとした方がいい。佐助にでも習ってきなさい。まぁあいつの笑顔も偽者臭いんだけど、あれわざとだし。
とりあえず戸惑ったふりをしたまま、大将さんに目を向ける…うん。やっぱ確実に堅気じゃないよね。それと、弱者なんかじゃないかな?
「…やぁ、ごめんね?急に連れてきちゃったりして。」
「え、と…いえ。あの、私はどうしてここに…?」
「ああうん、それ今から説明するからちょっと待ってね…ああとりあえず、この指輪。はめてくれないかな?」
嵐、と一言。それだけで彼は理解したのか何か箱を取り出しこちらに向けてくる。…中身はまぁ、大将が言った通りの指輪。ぶっちゃけあんまりかっこいいとは思わない。なにこれ。髑髏とかじゃないのか。
微妙な顔をしつつ、受け取る。
指にはめて、相手を伺えばやはり笑顔だった。
「あの、はめました…けど、」
「うん。ありがとう。それじゃあ…面倒だから、あれでいこうか。」
あれ、といったとたんズンッと重い気が1つ。ああ、久々だなぁこの感覚。と思っていると部屋の中にいる全員からも、向けられる。一応演技中だから、意識飛ばせばいいかな?…いや飛ばせないけどね。こんくらいの殺気じゃあ、ね。うん。というか久々の感覚で結構うきうきしてきてるんだけど。どうしよう。あー血がみたい。
とりあえず呼吸を乱したふりをしながら、体を押さえつけてしゃがむ。顔は見られないようにしておいた。ばれると厄介だし。いやまぁ一般人がこの殺気の中意識とばしてない事態おかしいかもしれないけどね。
あー、ころしたい。
▽△
「…合格」
一言。それだけで部屋に充満していた気はなくなった。あー肩こった。表には出さないけどそんなことを考えつつ、戸惑いの表情。今のが殺気だって気づくの普通じゃなくね?あれ、気づいちゃうのかな案外。普通がわからないや。
「指輪はめられた時点でまぁ平気かとは思ったけど…ってか、あーどうしよう。炎でなかったからいまいちわからないや…あ、その子に説明しといて。よろしく。」
急に笑顔をやめた彼。中途半端はよくないと思います先生。まぁその彼の言葉に黄色いシャツと青いシャツが返事をする。そして私のもとへきて立たせてくれる。腰抜けたふりしてるからさ、普通にたったらへんでしょ?
「…あの、一体どうゆう…」
「今説明するから、とりあえず座ろうぜ」
…座るのか。楽だけどこうゆうとき立ってた方が楽っていうか、いいっていうか。まぁいうこと素直に聞いておくけどさ。
どうにか座りつつ、青シャツと黄色シャツに視線を向けた。
「あの、それで、ここはどこなんですか?今のは一体…」
「あー、とりあえず、ここはボンゴレ日本支部なのな。」
「今のは試験だ。…虹の守護者のな。」
「はぁ…それで、合格って?」
「お前は虹の守護者に選ばれた。それだけだ」
急に赤シャツの言葉が横から入る。選ばれた、って…なにこいつうざいそんなの頼んでない。
「虹の守護者っつーのはなかなか見つからなくてな。しかもいつ現れるかもわかんねーんだ」
今まで空気を貫いていた、帽子を被って変な動物…トカゲ?を持ってる男性が言う。へーそうなんだ。で済むと思ったのかお前は
「まぁ、それでな。虹の守護者っていつどこで誰が選ばれるかわかんねーのな。」
「一応毎回選ばれているのだが、複数いたりするからわからぬのだ」
「はぁ。それで、今回は私が選ばれた…と。」
「そうだ。ちなみに虹のリングは適合者以外がはめると死ぬ仕組みになってるからな。よかったなお前。適合者で。」
…よくねーよ。なんだそれ。どこのゲームだ。いや婆裟羅とか使って戦ってた人間が言えることでもないんだけど。ねぇ、どうしよう。皆殺しにして帰りたいんだけど。日本支部とか言ってたから帰れるよね?…逃げちゃおうかな
「逃げようとか考えてんじゃねーぞ、お前もう死んだことになってるからな」
「えぇ?!な、なんでですか!」
「適合者じゃなかったら死んでるし、適合者だったらもう戻れねーからだ。だったら世間的に殺した方がいいだろ?」
「よくないですよ!私どうするんですか、帰れないじゃないですか!」
「きみ、ばかなの?…帰らせるわけないじゃん。」
紫シャツが言う。は?帰らせるわけないって?…ビキビキイライラ。理不尽すぎてぶっちんしちゃいそうだ。私の平穏返せ。
「お前は交通事故で死んだ。表ではな。もう帰る場所もねーんだ。ずっとここにいてもらうぞ」
「…勝手すぎます」
「勝手で結構。こっちもこっちの都合があるんだよ。ってゆうか俺はきみのこと保護してあげたんだからお礼を言われてもいいはずなんだけど?」
空気を貫いていた大将が急に声を張る。上から目線乙って言ってやりたい。てかお礼を言われる立場とかばかじゃないの?人の日常奪っといて?あーちくしょうもう演技めんどくさっ。
ガッとその場かた立ち上がり、大将の目の前へ行く。つか大将って呼ぶのも嫌だ。大体私の大将は、あいつだけだ。
「なに?むかついた?殴る?別にいいよ殴っても。避けるけどね。」
「いやいやそんなことはしませんよ、けど、まぁ…――断らせてもらうけどね」
「なにいっ――! 捕らえろ!」
「ふっふー♪遅いよ。」
元忍、なめないでくれる?
笑顔でその場に煙幕(毒入り)を放てば、とたんに煙が広がる。この毒の耐性はついているので私は平気である。
その場からどうにか逃走すれば、警報が鳴る音がする。
――あぁ、せっかく平和な世に生まれたのになぁ。
少し、落胆。
まぁ、どうしようかこれから。表世界で死んでるみたいだし。きっとあいつらは追いかけてくるだろうし。指輪は煙幕に乗じて置いてきた。あんなもの、いらないよ。
少し落ちた身体能力。
でも、結構鍛えてたりしたから、普通よりは早い。
記憶所持も楽じゃないね、でも、もう殺したくなかったなぁ。
あの煙幕で何人死んだんだろう。そんなことを考えながら、空へと跳んだ。
平和な世
(せっかく皆仲良くなれたのに)
(身分も、場所も関係ない)
(殺さなくていい)
(そんな世にやっと、たどりついたのになぁ)