とりあえず中に入り、ソファに座らせてもらった。
中には夜兎さんと志村君もいて、とても驚いた。2人も、凄く驚いていた。


『…で、きみ達、誰?』

「…鴉終」

「や、山崎退…です…」

「……高杉晋助」

「…ジミーや終にそっくりアル…」

「名前も一緒…なんですね……」


やっぱり、皆びっくりしているのがわかった。
先生に似た人は何を考えてるかよくわからない表情で山崎さんを見ている。
ふざけてないときの先生とよく似てたし、それととても…怖い、と思った。


『…ジミー君、一体どーゆーこった』

『…状況はよくわかってません。ただ彼等は銀魂高校3年Z組というところに所属してるみたいで…あと、俺や土方さん。沖田さんのことを知ってる風でした。』

『ふーん…』


業務連絡のような、そんな感じ。必要事項だけをまとめたような、そんな感じ。
つまらなそうに聞く先生似の人は、ふいにこちらを向く。感情なんて読めない。先生なら余計にわからない。怒ってる?泣いてる?呆れてる?つまらない?わからないわからないわからない。高杉君も山崎君も、固まってるのがわかる。それくらい読めないのだ。何を考えているのかがわからない。
ぼくらの知ってる先生もたまにわからないときがあったけど、それは本当に極僅かで、目の前のこの先生似の人は、本当にわからない。

ただ感情がよめないだけなのに、あの死に直面したときよりも怖いと感じるのは、なんで?


『…お前等、年いくつだ』


感情の読めない声でそう聞いてきた。でも、聞きなれている声で少し安心したのも確か。

とし、トシ…あぁ、年齢か。
脳が理解するまで少々の時間をかけた。


「あ…と、18になります」

『未成年…ね。本当にこりゃ別人みてーだ』

『そこで旦那、依頼の方は…』

『あー…いいぜ、ほっとくのも…なんかな…』

『!よかった…あ、それで依頼料のことなんですけ…』


ど、と言う前にチャイム音が重なる。
僕出てきますねと言って玄関へ向かったのは志村く…さん。志村さんだ。
玄関の方から声が聞こえる。

…高杉君と山崎君の顔が歪んだので、なんとなく誰が来たかわかってしまった。

ばたばたと音がし、誰かがきた。


『銀さん出前ー…って、あれ?タイミング悪かった?』

『……いや、うん…いいよ…お前も関係ある。こっちこい。』


少し呆れた声で、【ぎんさん】と呼ばれた先生似の彼は、頭にハチマキをつけて片手にラーメンを入れるようなやつを持っている女の人…ぼく似の、彼女を招いた。


『…あれ、山崎が2人いる。僕も2人いる。ドッペル?』

『そうかと思ったけどちげーみたい。同一で全く別な存在だとか』

『よくわかんない』


あんまり感情のこもってない、というかだるそうに会話する2人。
ぼくも大人になったらああなるのかな?とか思いながら黙って座ったまま。品定めのような視線が絶えないが真っ直ぐ前を向く。下を向いたら、負けだと思ったからだ。


『…そっか、ああそうゆうことか。うんわかった。んじゃ、あの子達も入れてもいいのか』


急にそんなことを言い出したぼく似の彼女は、玄関に行ってまた戻ってきた。
足音が複数に増えていたのは…気のせいじゃなかった。


『……………えーっと、終さーん?それ、一体……?』

『僕の寝室に倒れてた土方少年と沖田少女』

「…銀八?」

「あら…先生?」

「…土方さん?こっちの?」

「沖田姉…?」

「…とりあえずよかったね、土方君」

「ばっ、なななななにがだよ!!」

『どもりすぎだよ土方少年』


ぼく似の彼女がつれてきたのは、ちゃんとぼくたちの知っている土方君と沖田さんだった。よかったね土方君。沖田君と一緒じゃなくて。そういった意味で言ったんだけどなぜか彼は顔を真っ赤にして照れてしまった。別な意味に履き違えたんだと思う。ごめんよ勘違いさせてしまって。

いいおもちゃを見つけたとばかりに先生似の人と高杉君にいじられている土方君を横目で見つつ、山崎君と沖田さんが喋っているのを少し泣きそうな顔で見ている山崎さんも尻目にぼくは「僕」に視線を向けた。彼女も、ぼくを見ていた。


『…ねぇ、きみに一つ質問だ。きみのところには伊藤さんもいるのかい?』

「伊藤さん…?きみの言っている伊藤と同じかどうかはわからないけど伊藤鶴太郎って人はいるよ。土方君と毎日のように喧嘩してる。」

『………。へぇ、そう。そうなのか。そうゆうことか。ありがとう。じゃあミツバさんがいるのも納得だ。へぇ。いいなぁそれは。つまりは平和なのか。そうかそうか。』


自問自答というか独り事というか…。
まぁそんな感じで勝手に納得している「僕」にぼくは微妙な視線を送っておいた。視線に気づいた「僕」はまた口を開きだす


『そういえばの話。きみの所属?している銀魂高校3年Z組ってどんなところ?』

「学校だよ。普通の。ああ学校は通じないんだっけ?昔のいい方ならいいのかな…なんて言うんだっけか?てらこや?」」

『ああ…寺子屋か。なぁんだ。マフィアとかそんなんじゃないんだね』

「なんでマフィアは通じて学校が通じないのか摩訶不思議だね本当」

『まぁそれこそが同一で全く別な存在という意味なんじゃないかな』


今絶対心の中で語尾にどうでもいいけどってつけたな。とか思いながらお喋りがひと段落ついたらしい皆の方へ視線を向ける。
まずはこれからどうするかというお話なんだろうか?まぁぼくらは厄介払いでここに居つくみたいだけど。土方君と沖田さんはどうなんだろう?「僕」のところに厄介になるのかな?まぁ、どうでもいいか。




ぼくらと状況
(ぼくらはまだ気づかない)
(アドレスに、色がついていることに)