相対する彼は驚きの表情のあと、眉間の皺を濃くし、ぼくを睨みつけた。


『……お前等は誰だよ』

「ぼくは鴉終、銀魂高校3年Z組生物委員。きみは?」

『…真選組副長、土方十四朗』

「…そう、か。ちなみに言っておけば彼は高杉晋助と山崎退。ぼくと同じく銀魂高校3年Z組のメンバーだ。」


ぼくがそう言いきると、目の前の彼はまた眉間の皺を深くする。どこまで深くなるというのか。まぁ、今はそんなことはどうでもいい。

きっとぼくらの名前を聞いたことがあるのだろう。
奇遇だな、ぼくもきみの名前を知っているんだ。

ぼくは相手が口を開く前にまた言葉を紡いだ


「きみがぼくの名前を知っていようがいまいがこのさいはどうでもいいことにする。ひとつ警察であるきみに問いたい。ここに、ここの町に、“銀魂高校”は存在するかい?」


これさえ聞けば、全てわかる気がした。
船が浮いている理由も洋服を着てる人が少ない理由も近未来風と古風が一緒な理由も。

ぼくが答えをまっていれば、数秒間見定められるように見つめられたあと、目の前の彼は「ねぇよ、そんなもん存在しねぇ。」と答えを言い放ってくれた。

山崎君と高杉君が、酷く驚いたのがなんとなくわかった。


「…じゃあもちろん3年Z組も、」

『ねェ。第一がっこうってなんなんだ。なぜお前が高杉と一緒にいやがる』

「学校は学校さ。第一高杉君と山崎君とは友達だ。それ以外の理由で一緒になるときは班行動厳守のときぐらいだろうさ」

『…もう一度聞く、お前は誰だ。』

「ぼくは銀魂高校3年Z組に属するしがない第一生徒。それ以上でもそれ以下でもない。」


ぼくが言い切れば目の前の男は舌打ちをし、中に入れと言って来た。

ぼくらに選択権は無い。

さっさと中に入っていく、かのクラスメイトと同じ要素・同じ名前をした彼を、震えているかもしれない足で追った。
高杉君も山崎君も、背後から、ついてくる音がした。



▽△



通されたのは小さな部屋で、尋問部屋というか…うんまぁそんな感じだった。カツどんがあれば完璧だろうに。

ここで待ってろと言われしばらく待つと、とつぜん扉が開く。
その扉を開いた人物もまた、ぼくらの知り合いとそっくりな人間だった。


『おー本当でィ、山崎が2人いらァ』

「お、おきたさん…?」

『終の方は今確認してる最中でさァ、高杉は無理ですけどねィ』


からっと言ってしまう目の前のかれは、見た目・物言い、双方変わった様子は見えない。
話してる内容は別として、やはり彼らはぼくの、ぼくらの知っている彼らと違う様子は見えなかった。見えないだけで、やはり、違うんだけど。


「……きみは、だれだい?」

『山崎が言ったから知ってると思いますがねィ、沖田総梧。真選組副長でさァ』

「…副長ってさっきの男じゃなかったかァ?」

『…チッ、一番隊隊長でィ』


あ、なんだろう。ここの関係は変わらないらしい。少し場の空気が和んだ気がする。
そんなことを思っていたらまた急に扉が開いた。さっきの男と、もう1人。また見知ったゴリラを見つけてしまった。


『おい総梧、テメェはお呼びじゃねーんだよ。第一見回りどうした』

『土方さん気づきませんでしたかィ?超高速で回ってさっき帰ってきたとこでさァ』

『高速で行ってくんじゃねぇ!!』

『まーまートシ、今はいいだろう。今はこっちが問題なんだろ?』


ちらり、とゴリラはこちらを見る。いつものゴリラよりむさい気がする。そういえばいつもの2人よりもこの2人もむさいかもしれない。老けてるのか?まぁ後で聞いてみよう。

ゴリラさんが椅子に座り、他2人は壁によっかかったりしている。やはり腰に刀はつけたままだ。


『さて…まぁ知っているかもしれないが俺は近藤勲。真選組局長だ。』

「…ぼくらのことは聞いていると思いますんで省略しますね」

『ああ。…で、早々で悪いんだが…君らは、一体?』

「知らねーよ、気づいたらここにいた。それだけだァ」

「学校から家に帰るさい眩暈に襲われて、そして気づいたら公園にいたんです。ここの付近にある公園。そして警察にくれば家に帰れるかな…と、」

『公園…あそこか。』

「…すいません、話を折るようですがひとつ質問いいでしょうか?」

『なんだい?』

「………こちらのぼくらの肩書きは、一体なんなんですか?」


ぼくが真剣にそう問えば、目の前に座る彼は一瞬固まった。なんとなく予想はついているのだがちゃんと聞くまでは憶測のままだ。ちゃんと聞いて自分の立場を理解しなければ危ないだろう。

ぼくらが相手が話し出すまで待つと、目の前に座る彼は溜息をつき、わかった。と呟いた。いう気では、いたんだろう。


『まぁこれは言わなきゃならないから言うつもりだったんだが…総梧、ザキ呼んでこい。いるなら会わせた方が早い。』

『心配いりませんぜィ近藤さん、もう呼んでありまさァ』


入れ、という声と同時に扉が開く。

入ってきたのは、先ほど門のところでラケットと一緒に倒れてた、ぼくらの隣に座る彼と全く同じ要素をした男だった。


「お、おれ…!?」

『うわ、本当に俺がいる…』


似たような―まぁあちらのザキと呼ばれた彼の方は結構落ち着いているが―反応をした彼等を差し置いて、タバコを銜えている彼がザキと呼ばれた彼を一瞥した。


『あ、すいません…俺は真選組監察部隊所属の山崎退です。はじめ…まして?』

「あ、はい。はじめまして…?」


…なんだろう、凄く、面倒くさい感じがしてきた。




ぼくらと僕等
(…って俺警察なんですか?!)
(パシリだけどねィ)
(高杉君は絶対犯罪者だと思うんだ。刀向けられたし。)
(………お前はなんか普通の一般人っぽそうだよな)