しばらくその見慣れた公園でぶっ倒れる。いやいや動けないよ気持ち悪い。遊園地でテンション上がりすぎてコーヒーカップを回しに回した後のようだ。高校生の卒業が近い、見た目もろとももう大人な男女3人が公園でぶっ倒れてるってシュールな光景だ。

余計なことを考えながら、気持ち悪さから目を背け続ける。
これで治るわけでもないけれど、気持ち悪さにだけ集中していてもキツイだけである。


「…おえ」

「…無理しちゃ、だめだよ…」

「………つーか、ここ…どこだ?」


ガンガンする頭に、吐き気を呼びかける三半規管。
それでも、酔いが冷めるまでゆっくりしていることなんて到底できそうもない自体に、ぼくらはむりやり頭を動かすことにした。

高杉君の言った通り、周りを見渡せば凄く見慣れた公園がまず目に止まる。
ここまではなんの問題もない。

だが、問題はその後にあった。


「…空に、船が飛んでる……」

「浴衣…じゃ、ないよね。あれ…着物?」

「なんか…すっげぇ違和感ありまくりの町じゃねェかァ?」


上を見れば飛行物体が。
公園の外を見れば人が。
周りを見渡せば家が。

それぞれ同じはずなのに、有るものが全て違った。

空には飛行機は飛ぶけど船は飛ばない。
人は洋服は着るけど着物なんてめったに着ない。
和風も洋風も家はあるけど近未来風と古風の家が一緒になんてない。

なにかがおかしい。


「…質問だけど、この光景に覚えがある人はー…」

「いやいや日本にこんな場所ないでしょ…!」

「……! おいお前ェ等、携帯見て見やがれ…」

「え…?」

「…うわ、まじで?」


携帯の画面を見てみれば電波は立ってなく、連絡もとれない。
よくみればアドレスに入ってる人の名前の色が薄くなっていた。背景が白ならば白に近い灰色、黒ならば黒に近い灰色に。背景と同化してしまいそうなその色に、なぜか少し背筋が凍った。


「…2人の、携帯も…?」

「う、ん…あ、でも鴉さんと高杉さんのは、ちゃんと色ついてる…」

「…どうなってやがる」


3人で携帯を睨むように見つめるけれど、それが治る様子はない。
設定を弄ったところでなにも起きなかったし、登録し直してもそれは治る様子がなかった。

…この件は、保留しておくしか、ないかな。


「…とりあえず、どうする?」

「道も場所もものも違うから…学校に戻るのもできないし…」

「歩くしかねぇだろ、なるべく近場歩いて戻ってくるぞ」

「それしかないよね…」

「とりあえず警察捜す?名前言えば家分かるかもだし…」

「そうだなァ」

「あ、なら人に聞いたほうがいいよね。おれ聞いてくるよ」


少し待ってて、と言って近くを通る人に話しかけに行った山崎君。
こうしてみるとぼくらの格好がおかしく見えるね、なんて高杉君に言ってしまったのはしかたがないと思う。

みんな着物着物着物。どこを見渡そうと、着物を着てる人ばかり。
洋服を着ている人もいるけれど…なんだか、お化け屋敷にでも出てきそうな仮装した人ばかりだった。

周りを観察していると、山崎君が戻ってきて「ここを少し行ったら右に曲がると真選組ってところがあるって」と、聞いてきた情報を教えてくれた。


「…新撰組?」

「うん。でも漢字違うみたい。真実の真にしんにょうの方の選だった。」

「んだそりゃァ?パチモンみてぇじゃねぇかァ」

「まぁ、とりあえず行ってみよう。行けば何かわかるかもしれないし。」


第一、ここにいても意味が無いよ。そう言えば高杉君もそりゃそうだなァと言って歩き出した。ぼくと山崎君も高杉君を追いかけるようにして歩き出した。


ぼくらはまだ知らない。
ここが一体、どこなのか、どういったところか。

まだなにも知らなかったんだ。



ぼくらと変日
(好奇の目が痛い)
(おれなんてさっきから怯えた目付きで見られるぜ)
(…おれ特になにもないや、はは…)