今日も楽しい…と、いうかうるさい1日だった。


「うぉーい鴉、日誌できましたかィ?」

「できてるよ、あとは提出するだけ。戸締りは?」

「OKOK、土方さんの殺人準備も万端でさァ」

「そうごおおおおお!!」


…少し訂正。
うるさい1日だった。否。である。
現在進行形なり。


「山崎君、高杉君。ごめん待たせた。」

「いや全然待ってないけど…いいの?日誌放置で」

「提出以外全部やったんだからいいでしょ…結局戸締りしかしてくれてないし」

「そらァそうだなァ…んじゃ、バレねェうちに帰っか」

「そうだね」

「うん…あ、帰り本屋寄る。新刊でた。」

「あ、わかったよ」

「いいぜェ」


教室で喧嘩(という名の殺し合い)をしてる2人は放置し、いつものメンバーで帰る。
この2人は帰り道が一緒で自然と仲良くなった仲だったりする。最初は山崎君が高杉君を怖がりそんな山崎君の態度に高杉君がキレたり大変だったけど…。

まぁ、今では異様トリオと呼ばれるまでの仲になったんだけども。


「お、終ージミーしんちゃーん!またねーアルー!!」

「終ちゃん、じゃあね」

「おう、じゃあな」

「うん、じゃあね」

「しんちゃんやめろっつってんだろビン底眼鏡」

「あ。鴉ちゃん、山崎君、高杉さん、さようなら」

「晋助せんぱァァァい!さようならっす!!」


廊下を歩くだけで四方八方から声がかかる。これはヤンキー・タカスーギのまとめている鬼兵隊というヤンキーグループの規模がでかいせいでもある。クラスのメンバーもいるけど。下駄箱につくまでに何回帰りの挨拶をすればいいかわからんね。

まぁ、いつものことすぎてもう慣れたけど。



▽△



無事沖田君にバレないまま本屋についた。2人もちゃんとついてきている。これもいつものことだ。
2人は自分の見たいものを見に行く。もちろん、ぼくも自分の見たいものを見に行く。一緒に行動しないのだっていつものことだ。見たいの見て、欲しいの買って。それでいいのさ。ぼくらはいつだってそうなのさ。なぁんて、少し悟ってみたりね。

そして新刊を何冊か手に持ち、会計しようと思ったときだ。


「ん…?」


一瞬目の前に移る景色がブレた。気がした。
もちろん気がしただけであって、その後目をこすってみても特にブレなかったのだが。

気のせいかな?と思いながらレジに向かう。
レジで会計をしていれば、2人がぼくのもとへやってきた。その手には何も持っていない。ほしいものがなかったのだろう。そういえば高杉君が欲しがっていたものは発売日もうちょっと先だったっけ。

レジで会計を済ませ、本屋を出る。そのとき高杉君が「なァ」と声をかけてきた。


「ん?」

「山崎と話したんだが…さっき、地震でもあったか?」

「地震…?いや、なかったと思うけど…」

「揺れた…っていうか、ブレた?気がしたんだけど…それじゃあ気のせいかな」

「ブレた…ぼくもなんだよね…疲れてる、のかな?」

「今日は早く帰って寝るかァ」

「賛成、」


まぁ本当に一瞬だったからただの気のせい、ってこともあるんだけど。
3人共ってことでさすがにおかしいと思ったのかぼくらは今日は早めに帰って眠ることにしようと言いあう。まぁ、守るかどうかは別として。


それから3人で家に帰るため、いつも通る公園に入ったときに、異変が起こった。


「ッ!?」

「、え!?」

「あ"!?」


世界が曲がる、とは違う気がした。
ましてや、自分が揺れているのとも、また違う気がした。

ぐわんぐわんと視界が廻るように、世界が廻るように移り変わる。
不規則にブレて行くその視界は、目をつむったところでその異変が感じられなくなることなんて全くなくて。
ほとんど反射的に近くにいた2人の手を掴んで地面に膝をついてしまったけれど、2人がぼくのことを支えることもなくそのまま雪崩るように地面に膝をつくことからぼくだけがこの異変を感じているわけじゃないことがわかった。そんなことを理解する余裕だけ、なぜか、あった。

しばらく耐えれば、急に収まる「ブレ」。
「ブレ」が止んでも、ぼくらは互いの手を握り合い、その場にしゃがみこんでいた。





ぼくらと境界
(やべえ…酔った)
(気持ちわるッ……!)
(吐きそッ…おえ、)