■ つまるところ、僕は『権現』なのさ。

※権現シリーズとは全くの別物です



唐突ですが、問題です。
徳川家康という人物がどのような人物なのか、知っていますか?

戦国時代のなんかすげえ人で、とにかく狸だったけどぱねえ人で、最終的には神様とか言われるようになった、たぶん天ぷらの食い過ぎで死んだとか後の世で伝えられてる人です。要約しすぎ?いや、こんくらい知ってりゃ大丈夫でしょ。
まぁとりあえず、小学生でも知っている戦国の大名。最終的には天下統一しちゃってるし、徳川幕府とか言われるもんもあるほどスゲーやつ。今の時代で言ったら、政治家ポジションなもんなのかなあ?総理大臣な徳川家康ってなんかすごそう。ってそうじゃなくて。
なんかすげーしぱねえーしどぇれえ御人だけれど、偉人には壮絶な過去が付き物なように、彼もまた幼少時代はいろいろたくさん大変だったらしい。詳しくwebへ。
過去もそうだし成し遂げたこともそうだしホトトギスの例えでもそうだけれど、いろいろと、それはもういろいろと大変な人だったことはわかるだろう。それと同時に、とても凄い人だったことも。時代が違いすぎて正直憧れを抱けるほど想像はできないこともあるけど、いや、ぶっちゃけンなお偉いさんポジションになんかゼッテー収まりたくねえってのが正直なとこなんだけど、うん、その、アレだよアレ。


成っちゃったんだよ、平和ボケしたゆとり世代の女が徳川家康に。


気づいて絶望するしかなかったよね。あの徳川家康様とかマジなんてこと状態だったよね。男尊女卑がツエーこの時代に中身バリバリ現代女子で未来の大名様の誕生だよ?どういうことなの??馬鹿なの???死ぬの????
げっふん。取り乱したけれど、まぁはいそんな感じで今ゆったりまったり過ごしていますはい。糖分もなけりゃゲームも漫画もお菓子もない世界に死にそうになってるけど私は元気です。元気有り余りすぎてこの間木の上からライダーキック決めてたら女中さんにクソ怒られましたもう二度とやらない。忘れるまでやらない。

さてはて、唐突になんでこんな語り出したのかっていうと、正直ただの現実逃避に過ぎない。つい最近成ったわけでもないし、私だってもうそこそこの年月を過ごしてきた。元服はまだだけれど。それでもこの時代で言えば私はいい年なのだ。


「それなのになぁんで私はいつまでも人質なんスかねぇ」


ははは。今日も楽しく誘拐さ、ってどちくしょう。起きたら牢屋とか死ぬほどビビるからやめてほしい。誘拐されても起きない自分もいい加減学んで欲しい。
牢屋暮らしにとっくに慣れている私はいかにクソ最悪な環境でも有意義に過ごす術を持ち合わせている。フィーフィーー!バカだな貴様ら!牢屋で震えながら涙に暮れる私は二度目の誘拐時にはもういなかったわ!!
だからといって、普段蝶よ花よと愛でられ育てられている身としては、牢屋暮らしとかなに俺様にやらかしてんだアアン?とか思わなくもないわけで。


「あーあー、誰か助けに来ないかなー」


まあ来るわけないでしょうけど。お腹減ってきたな。寝るか。
空腹から睡眠に意識を切り替え、くあっと大きく欠伸をひとつ。申し訳ない程度に備えられたうすっぺらい紙のような布を体にかけ、そのまま横になった。





ぎゅいーん。うえ、あ、やめ。ぎゅぎゅぎゅいーん。やめ、やめて。ぎゅーん、ぎゅぎゅぎゅー。やだ、それやだ、やめ、やだ、近づけないで、あ、あ、


「ぁぁぁあああああアンタは悪魔かぁあああッ……、て、あ、夢か…」


嫌な汗がだっぷりかいてて凄くシャワー浴びたい気持ち悪い。今も脳裏に響くあの忌まわしき高音に、背筋が凍る。あの音聞くとほんと条件反射なのか涙出てくるよねー、ぎゅーん、死刑宣告されてるみたいで。ぎゅぎゅぎゅーん。あ、ちなみに歯医者の話です。歯医者の夢見てました。キーンと耳に付く高音ドリル。ぎゅいーん。なんでこんな世界でぎゅぎゅぎゅーんぎゅいーんその光景を見なきゃいけないんだ。プシュー。あ、そういえば今って虫歯になったらどうすんだろ?抜いちゃうのかな?ブオオオオ!待ってさっきからめっはうるさゴォオオン!!!ぎゃあああ壁が崩れたあああ!


「な、何事だ!?」


思わず立ち上がれば、吹っ飛ばされたらしい武将達が一瞬「今更か」という思いを込めて見てきたが私の目には見えない。
プシュー、と音を立てて現れたそれに、現在では聞きなれない懐かしいエンジン音を感じながら構える。武器がないのが些か辛いが、それでも普通に立っているよりは楽だった。だいぶ自分も戦国色に染まってしまったな、という自虐を込めた笑みを浮かべながら、煙を切り裂くように出てきた巨体に目を見開く。

大きな茶色い甲装。ギラリと光る赤色の瞳(ひと…み…?)。
この時代で見ることはないであろう機械的なそれに、警戒よりも唖然とする。なんだこいつ。すごいでかい。
そりゃー壁も人も吹っ飛ぶよなぁ、どういう構造してるんだろう。人型ではあるけど、さすがに全自動ではないはず。あの時代でもここまでのは作れなかった。いや、作らなかった。この機械とは遠い時代で作れるとは思わない。いやでもなんか変な武器とか変な鎧とかあるからなぁ変なことに…。とりあえず分解して図面書き起こしたいんだけど、そしたら死ぬかな。
意識が完全に別のところにいきながら、プシュープシューと音を立てているそいつをまじまじと見る。煙を裂いて重い一歩を踏み出してきた音を聞いて、思考が切られる。そいやこいつ結局誰や。誰だとしてもわしここから身動きとれないぞ!?死ぬくね!?!?元服前に江戸時代の消滅!?!?!?

ズギューンと音をたて、光る右目に………そうだ土下座しよう。そう決意して、流れるような動作で膝を折り曲げたわしよりも早く、そのロボットはわしの前に跪いた。


「………もしかして、」


忠勝、か?
そう呟けば、どこか嬉しそうな、熱い想いがこもっていそうな機械音が鳴り響く。

そんな忠勝を見て、こうして誘拐される前に話していた過去を、思い出した。


『どうしたら誘拐されないようになるかなあ、忠勝』

『とりあえず気配に気づくところからですかねえ、竹千代様』

『うーん、寝てしまうとどうしてもな…あ、いいこと思いついたぞ忠勝!』

『どうせロクな案じゃないでしょうけど、なんですか竹千代様?』

『忠勝毒舌。いやな、忠勝がめたくそ強くなって、わしがとっ捕まっても1人で城破壊しにくればいんじゃね?っていう最強に凄い案を思いついたのだ!』

『ははは、ほらやっぱりロクな案じゃありませんでしたね。』

『忠勝!そんな人の良さそうな笑みでなんてこと言うんだタダカァァツ!!!』


……………………。

あれ本気にしちゃったんだー!!!

ロクな案じゃありませんでしたね、って間も入れずに笑って言ってたじゃないか忠勝!ツンデレだったのか忠勝!というかロボットになれなんて言ってないぞ忠勝!どうしてそっちに行ってしまったんだ忠勝、タダカツ、タダカァァツ!!!!!

思わず項垂れれば、よくわかっていなさそうな忠勝が、ぎゅいーん?と効果音を発していた。



それではダメなんだ!
(戦国最強とか呼ばれるようになったわけだが、普通に反則だと思うんだ、忠勝)(ぎゅいーん)(いや勝てば官軍ですからじゃねーよ、笑ってんだろお前。人の良い笑み浮かべてるだろお前。)(プシュー)(おい喧嘩売ったろ今。表でろおいこら)(ぎゅぎゅーん)(家康様なんかが私に敵うはずないじゃねーですかじゃねーよ天下1番近いのわしだぞこの野郎表出ろオルァ!!!!!)



***
あとがき。
きっとこのあとコテンパンにされます。
なんでロボットになったんだ忠勝の部分が書きたかっただけの産物です続きません。

一応読んでてわかる通りに、女主家康成り代わりで婆娑羅知識は無しです。別に♀化はしてません。余談ですが機械科出身。からくりを見るたびに図面に書き起こしたくなる病にかかってます。たぶんアニキと仲良いこれ。

本当は三成との間柄も書きたかったのですが挫折。たぶん適当すぎて三成にキレられてます。でも三成に対して主人公もキレてます。ぞうして奇天烈なやつらしかいねーんだこの戦国時代とキレてます。
そんな2人ですが、この家康意識切り替え能力所持していますので、飯抜いたり寝なかったりするので保護者にすげー怒られます。だって飯食わなくても持つもんなぁ、三成?ああ…正直週1食えば十分だ。人間が生きられるギリギリのラインだがわしも以下同文だ三成。このあと怒声が飛んできます。でもこの家康別に少食じゃない。むしろ大食らいすぎたから自制したら行き過ぎた感じ。食わなくてもあの体型維持が余裕だからたぶん人外ですこいつ。
こいつら関ヶ原起こせるのかなあと思いつつも、そっとここに供養させて頂きます。

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