■ つまるところ、僕は『毛利』なのさ。

※元々ある『毛利』なのさとはまったくの別物です。



寝て起きたら赤子になっているとは、さてはて一体どういった状況なんだか。

つい先程、自分は至って健康に、幸せに天寿を全うし眠るように死んだはず。
そう、お伽話にあるように自分は若いわけでも、ましてや事故にあったわけでも、前世が不幸すぎたわけでもありはしない。

立派に老いて、立派に天寿を全うした。
そして今現在赤子。さてはて、これ如何に。

赤子、と言っても生まれたてというわけではなく、お乳の時期は過ぎ去ってはいるらしい。現代で言う離乳食の時期ということである。
どうやらまだよくは喋れはしないみたいだけれど、動くぶんには申し分のない体だった。ついさっきまでヨイヨイと、立つことさえ困難であった体との違いに少しだけ酔いそうだわ。


そういえば、ひとつだけ。
私は生前とは違って、今世では所謂男の子なのだけれど、どうやらそれだけではないらしいのです。


「松寿丸様、朝餉の時間でございますよ」


松寿丸。
私が青春時代を全部殴り捨ててはまっていたゲームに出てきたキャラクターの、幼名。

最初に思い出すのがゲームだなんて、おいおいそこはちゃんと史実から思い出せよ…と思われるだろうけど仕方ない。私は結局最期までオタクを貫いた婆さんだったのだから。もちろん史実もそこそこ、一般的には習わない部分だって興味本位で調べたり友達が知っていたりしてるから知っていた。あと、生前夢小説をあさったら出てきたりとかしてたから、知っていた。


「はい、わかりました」


呼びにきた女中に返事を告げ、見つめていた太陽から離れる。
生憎なことに、生まれ変わったといってもついさっきまで婆さんだった私だ。朝日が登る前に目覚めてしまっていたから、暇つぶしにと見ていたら朝餉の時間にまでなってしまう…というのが毎日続き、この呼びかけも日課となってしまっているのである。
申し訳ない、とは思うものの女中や母上、父上は微笑ましく見守ってくるので余計に居た堪れない。実は私、あなたたちよりも年齢倍の倍くらい…それこそ、家臣っぽいじいちゃんよりももしかしたら年上なんですよ…なんて言っても絶対に信じてはもらえないだろう。

まさかこの年になって、やれ抱っこだやれおんぶだやれ子守唄だ…なんて、そんなばかな。
恥ずかしくて仕方ないなぁ、と思いつつも甘んじて受け入れております。お陰で物静かな子供だと言われました。…さすがに、お子様のようにはしゃげる自信、私にはありません…。


さて、朝餉を食べながらも思うことが私にはあります。
最初松寿丸に生まれ変わった、なんて思っていましたけれど、どうやらそれだけではないらしいのです。
松寿丸、と言えば後の毛利元就。大名と謳われ、日ノ本一の智将の名を欲しいがままにしてきた、文武両道でぶっちゃけなんか凄すぎる人です。
それだけでももう生前馬鹿だった私には無理難関すぎるのに、最近池を見て気づいたのですが、私はあの某スタイリッシュアクションな戦国ゲームにいる毛利元就と要素が激似なのです。完全なるフラグなのです。

なんだこれ。成り代わりか。

盛大なる真実に大変驚きはせど、熱を出すほどに考え込むなんてこと生憎できませんでしたので、軽くしか知らない史実と、アニメなのかゲームなのかそこらへんも配慮しながら死亡フラグを潰していくしかないなぁ。なんて思っています。
いやでも今私の一番の死亡フラグは正直智将になれるのかってところなんですが。
心理戦とか苦手なんですよね…アホといいますか馬鹿といいますか、生前○狼なんてゲームにハマリやってはいましたものの、全くもってできませんでしたし…心理戦というか推理か。すいません馬鹿なババアで。

まぁ、そんなことは置いといて


「…とりあえず、ちちうえ。あさから、おさけ、やめたほーが、いいです」


身近な死亡フラグからつぶしていくとしましょうか。




+++
完全にのちのジジイ毛利が出来上がります←

天寿全うしたあとの成り代わりでもいいじゃないですか、と。
ぶっちゃけそれっぽさは全く出ませんでしたがね←
落ち着きがあり、冷静で、物静かで…でもたぶん少し茶目っ気はあるかもしれない。婆さんってそんなもんじゃありませんか。…私のおばあちゃんは朝にめっぽう弱かったですが←

中身お婆さんだからみんながみんな子供にしか見えないでしょうね。
前世と合わせたら100近く生きてますし…ああでも史実と合わせると103歳だからそうなるようにしてもいいんですが、80代で死んでたらそうなりますよね。毛利さん外見年齢20代ですし。
恋愛フラグどころかなんかみんながおばあちゃんっこになりそうですね、愛されだったら。

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