■ 震える虚勢に胸を張れ

成り代わりバレたったよ!なんてこったい!!
そう思うも、よくよく考えれば成り代わりなんて言葉知ってるのなんて俺と同じ時代で、俺と同じ趣味してるやつしか普通に考えればいないわけで…。


「…もしや、貴様も…」

「そうそう正解ー!気づかなかったらどうしようかと思ってたよ」

「いや、バレたのが結局衝撃的で私も逃すところだった…。その家事能力の皆無さは自前で?」

「え、最初に聞きたいのそこなの?俺様悲しい」

「いや…まさか私よりもできない人がいたとは思わなくてだな…」


まぁ正確に言うと私はやってないだけなのだが。お茶くらい運べるし転ばないぞ私は。本気で走ってお茶吹っ飛ばしたことはあるけれど。あれ以来ちゃんと考えて歩いてお茶運んでます。いやまぁ、運ぶときのが少ないけどな!


「自前というかなんというか…いや前も確かにできなかったんだけどさ、ここまでじゃなかったはずなんだよねぇ…どうしてこうなった」

「呪いにでもかかったのか貴様…家事という行為にどれだけの無礼を働いたらその呪いを受けるんだ…」

「………知らない………」


遠い目をしながら目尻に涙を乗せている姿は、なんか、こう、凄く可哀想に見えてきた。
まさかいつも慰められる自分が慰める側に回ってしまうほどに可哀想なやつが…別世界といえど存在したとは。慣れない手つきで頭を撫でてやる。あ、わしゃってしたくなってきた。しないけど。

それにしても、ただお茶と団子を持ってくるだけなのに随分と遅いな。
ふと疑問に思い、視線を猿飛佐助君から襖へと向けた、そのときだった。


ドッゴォォオオオン!!


…………説明したくもないが、目の前の襖を突き破って、猿飛(オカン)が突っ込んできました。
私はもちろんのこと、さっきまで半泣きだった猿飛佐助君も涙を引っ込めて顔を驚愕に染めていた。いや、本当、なにがどうしてこうなった。


「いつつつつ…」

「お、おい猿飛…ど、どうした?大丈夫か…?」

「………あはー俺様は、大丈夫。けど、うん、ごめん石田の旦那…」

「え?え?なにがどうしてどうなったの??敵襲???敵襲なの???なんでそんな遣る瀬無い笑み浮かべてるの???」

「…あーもうアンタでいいや…ちょっと今すぐ石田の旦那に化けて」

「え?」

「早く。じゃないと団子抜き。」

「今すぐならせて頂きます」


ピッと敬礼したあとに、どろんと口で言い(…口で言うんだっけあれ)、気づけば目の前には私そっくりに化けた猿飛佐助君(見た目三成)がいた。

…うん、なんだろう。今の一連で大体自体を理解したぞ。
それといつのまに猿飛(オカン)は猿飛佐助君(見た目三成)の扱い方を理解したんだろう。まさか子供属性はみんな甘味好きだなんてそんなこと思ってないだろうな?


「…で?俺様何すればいいの?」

「その姿でそんな仕草をするな。まぁいい、状況は理解した。…貴様、確か私の世界に興味があると言っていたな?」

「え?あー………いやあれ嘘本当嘘全く興味ないんだ実はあははだから俺様はこれd」

「団子」

「…逝ってきます!」


何かを本能的に察知したらしい猿飛佐助君(見た目三成)は潔い笑顔で涙を浮かべながら、まるでこれから戦争にむかうように敬礼をして先程猿飛(いつの間にか綺麗になってる)がぶっ壊してきた壁から外へと飛んでいった。

…逝ったら、団子は食えないわけだが、あいつはそれに気づいているのだろうか…。

下から聞こえる狂気渦巻く明るい笑い声(確実に我が宿敵ゴンゲーン)や殺気渦巻く地獄から這い出るような怒声(確実に我らが凶王様)を聞き流しながら、あ。あいつ死んだな。と私も何か虫の知らせのようなものを受け取ったのであった。




震える虚勢に胸を張れ
(それにしてもあいつ私の刀持ってたけど…化けると刀も装備できるのか?)
(みぃぃいいぃぃつぅぅうぅうなぁぁあぁあああありぃぃいぃいいいい!)
(イィィイィイイエェエエェエエヤァアァァァアアアスゥゥウゥゥウウ!)
((Uwaaaaaaaaaaaaaaaaa面倒事ってレベルの話じゃねェェェェこえぇぇぇ!!))

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