■ 平行世界
「…つまり寝て起きたらいつのまにかここにいた、と……」
…俺と同じ状況やん。
あれか。やっぱこれ睡眠とっちゃいけないってか。俺も猿飛も毛利…いや、毛利はぬきで。毛利以外の2人は数少ない睡眠もとっちゃいけないってのかよ。畜生爆発しろ!!
「…で?帰る方法とかわかってる?」
「いやーそれが全然わかんなくってさ、寝たら戻れるかと思って二度寝したけど無駄だったんだよねー」
あはーと笑う彼、猿飛佐助君(さっき泣き出した方)は猿飛(オカンの方)にすぱんっと叩かれ「あのタイミングで二度寝する人いないでしょ普通!」と叫んでいた。
明らかにあの厨二病と俺のせいで猿飛が、というかこの世界自体が戦国時代とかけ離れていくのをヒシヒシと感じながらも反省はしない。
「…こっちの世界は随分と平成染みてるねー」
「へいせい?」
「なんでもないって、それはそうと…へー、これがこっちの凶王様なんだー?」
よろしくーっと軽く言ってくる猿飛佐助君にこちらもよろしくーと軽く返す。
そうすれば少し見定めてくる色が薄くなったが、やはり…なんてゆーか、食えない奴感が否めない。こっちの猿飛君と同じ格好である程度同じ性格なはずなのに…なんか猿飛佐助君のほうが忍に見える不思議だ。
こちらもこちらで観察していれば、真田が急に立ち上がり部屋から出て行った。
どうしたんだろうと思いながら空を見上げれば、丁度八つ時。
…団子取りに行ったなあいつ、とか思いながらいれば猿飛も少し待っててね!あ、あんたは絶対くるな!と叫んで部屋から出て行った。
「…貴様、随分とやらかしたようだな」
「えー俺様普通にやってただけなんだけどなぁ…確かに団子作れって言われて台所粉だらけにしたけども」
「十分だろう」
「え?まじで?」
どうやら破滅的に家事が下手らしい。さっきは真田が面白がってお茶持って来いって言って、途中ですっ転んだらしい。
オカン佐助で有名なのに家事が全くだめって…凄いレアかもしれない。
そう思うと同時に、ここまで家事が下手なのってもはや呪われてるんじゃあ…と思うしかなかった。
「…ねぇ、あんたさ、楽しい?」
「は?」
急に笑いながら問いかけてくる猿飛佐助君に素っ頓狂な声で返す。
楽しいって、どこらへんのことを聞いているのだろうか?
団子を食っているときとかは確かに楽しい、けれど家康に追い掛け回されているときや真田に裏切られたときや刑部に叱られてるときなんて全然楽しくない。あと毛利の無茶振りとか超辛い。あれ、てか今思ったんだけど俺結構辛い目にしか会ってなくね?昔からこんな感じだったんだけど。なにこれ不憫ってレベルじゃないよな?
少し考えていれば、猿飛佐助君はけらけら笑いながら「そんな深刻に考えなくていいよー」と言ってくれた。いや、深刻に考えさせたのはお前だろう。
「あはーだってさ、あんた凄く楽しそうだったから苦労してないのかなー?って」
「苦労してないとか…お前、私の生活を見ていたらそんなこと言えなくなるぞ。苦労しかしてない。」
「へぇ、そりゃぜひ見てみたい。こっちいる間に見せて貰おーっと♪」
「ごめん被りたいんだが」
あんな被害にあいたくない。超疲れるし。もうはんぱなく家から出たくなくなるし。お願いだから俺に安息をください。
そういえば放置してきた家康と刑部と三成(私じゃない方)は一体どうしているだろうか?
少しばかり気になった。
平行世界
(つーかあんたあれだよね?俗に言う成り代わりっしょ?)
(うええなんてお前わかるの!?)
(いや、性格違いすぎるし。なんとなく)
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