■ 消えた刀が切欠だったのに、

「――――さぁあぁあぁああるぅううぅうぅとぉおおぉびぃいいい!!」

「うわあああ石田の旦那怖っ!残像残るくらいの速さってどんだけ!?てか音が遅れてやってきてるよ!!」


…まぁ今の状況だけでどこに逃げたのかはもうわかったはずだ。そう、俺は今上田城にきていた。あ、俺って言っちゃった。最近私が定着してきたのに。これも全部家康のせいだ。

家康はどうにか撒いたがたぶん10分もしないうちにやってくるだろう。いや、きっと5分もかからない。なぜか私がどっかにいても獣並の嗅覚なのか野生の感なのか必ずやってくるからな…それはもうガス台にこびりついた油汚れのように。


「そんなことはどうでもいい!猿飛!今すぐ私を助けろ!」

「えぇ!?助けろって何から――」

「みぃぃいいいつうううぅなああぁああああぁりいいいいいいいいい!」

「うわああなんかきたああああ!」

「うわああまだ1分もたってねぇのにいいいい!」


1分って何!?とすかさずつっこみを入れてくる猿飛を完全スルーし(だって今そんなことに構ってる暇ない)走って上田城に入る。まさか敵の城に入ってくるだなんてことは…するな。普通に。夜這いにくるぐらいだもんな。え?つまり俺どこに逃げればいいわけ?どうしよう、外国に行っても追いかけてくる気しかしない。次元超えるか?1回できてるんだからもう1回くらいできる気がする。

現実逃避もそこそこに、後ろからの叫び声で現実に戻される。おい、誰か止めろよ。不法侵入者だし敵軍の総大将だぞあいつ。俺も不法侵入の時点では一緒だけど同盟組んでるから大丈夫だろう。同じ軍の総大将だし。つか家康足速いなおい!?お前パワータイプだろ!?なんで俺に追いつけるんだよ!?


「三成!楽しいなぁ!」

「全然楽しくない!というかその手に持ってるものはなんだ!」

「ただの紐だ!」

「だからなぜ紐を持ってるんだああああ!」

「絆の力で三成と仲良くなるためさ!」

「紐の力で私を監禁するの間違いだろう!?」

「ははは!なんのことだ!」

「そんな爽やかな笑い方してもお前の獲物を見つけた目は隠せないからな!」

「三成は照れ屋だなぁ、だがそんなところも大好きだ!」

「真田あああ助けろてめえええ隠れてんなああああ!!!」


キャラ崩壊なんて気にしてる場合じゃない!確実に面倒事に巻き込まれないため隠れてる真田を呼んでみる。うん。やっぱ出てこねぇなこのやろう。お前西軍全軍引き連れて奇襲仕掛けるぞバーローが!

…形部の団子あげるからとか言ってみようかな、前回それで出てきたんだよな…あ、いやまてよ。確かその方法でいったら家康が「ならば忠勝の団子をやろう。だから三成を捕まえてくれ!」とか言い出して(もうオブラートに包んでないよ完全に捕まえろっつっちゃってるもん)忠勝の団子を食ってみたい真田は軽く寝返って俺のこと捕まえようとしたんだよな。いや死ぬ気で逃げたけど。もうあんな怖い思いしたくない。


「猿飛に金…いやあいつその倍は軽々しくだしそうだ…」

「ははは!何をぶつぶつ言ってるんだ三成?猿飛!希望の額やるから三成を捕まえてくれないか?」

「うぇえぇええ!?家康うう私の案聞いてただろてめぇえぇええぇ!猿飛!お前その案乗ったら絶交だからな!真田に命令して減給してやるからなぁあぁあぁあああ!」

「なんで2人共俺様頼ろうとしてんの!?大体あんたらの速さ追いつけないから!ばかじゃないの!?人間なめてんの!?死ぬの!?」

「だが断る!」

「てんぱってんのわかるけどちゃんと話そう石田の旦那!あんた死ぬのの部分しか聞いてなかっただろ!」


追いつけないくせになんで声聞こえてるんだとかいうつっこみは入れないでくれ。そうゆう世界なんだ。というか猿飛もだんだん俺に感化されてる気がするんだがきっと気のせいだろうと思う。

そうだ、気のせいだ。
つまり全部気のせいだ。

家康が紐持って追いかけてくるのも、私の刀がないのも、真田が団子銜えながら正面から迫ってきているのも、二槍を構えてるのも、風魔が猿飛連れ去ったのも、全部気のせいだ!


「…っつーか風魔連れ去るのやめてやれっつったろおおおおがあああ!大体なんで今連れ去ったあの野朗!ちくしょう敵しかいねぇぞばかやろおおお!!」

「三成殿おおお!団子の為死ね!」

「真田の糞野朗がっ!口調変わってんぞ馬鹿っ!大体誰がそんなもののため死ぬかっ!」

「HAHAHA三成!早くわしの物になれ!」

「うわあああん秀吉様ああああ半兵衛様ああああ形部うううう!もう嫌だああああ!」

「はっ三成の泣き言!誰か、誰か録音機を…!」

「時代考えろ馬鹿!BASARAだからじゃ済まないぞそれは!ってつっこんでる暇があるなら逃げろ俺えええ!」


…その後、さすがに止めに入ったホンダムやら政宗やら、助けにきた刑部やらお市やら元親やらのお陰でどうにかこの騒動は治まった。結局刀は見つかっていないがそんなことはもうどうでもいいらしい。

ちなみに、この騒動以来余計部屋から出なくなった三成君であった…。



消えた刀が切欠だったのに、
(やれ三成、部屋から出よ)
(嫌だ!私はもう出ない!死ぬまで出ない!!)
(闇色さん…可哀想……)

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